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Darkness spirits Online
第20話 終わらない憎しみ
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そうした家の事情があるため、五野高の男子達の間では、優璃と利佐子には誕生日プレゼントを渡さないことが暗黙の了解となっていた。一介の高校生に買えるプレゼントなどたかが知れるものであり、御曹司達が彼女に渡すであろう品物には敵わないことが明白だからだ。
 それに彼女は、御曹司達からのプレゼントまで嫌がっている節もある。そんな彼女の心を射止める物など、おいそれと手に入るはずもない。

 ――何より中学時代の彼女に対し、遠慮を知らなかった当時の男子達がプレゼントを大量に送った結果、激怒した利佐子の説教を招く結果となった過去が大きいのだろう。
 その一件は今も伝説として語り継がれており、この暗黙の了解を守らねばならない根拠として周知されていた。

「お前も迷惑を掛けている自覚があるなら、面倒ごとに巻き込まれんよう立ち回れ。痛い目に遭う前にな」
「うん……気をつけるよ。ありがとう」
「ふ、ふん。礼なんかいらん。それよりお前、伊犂江さんに――」

 そんな時期である以上、今年に入って優璃と話すようになったRが、その暗黙の了解を破る可能性について考えなくてはならない。そう睨む大雅が、じろりとRに視線を移した……その時だった。

「あ、飛香くーん!」
「飛香さん、真殿君、どうされたのですか?」
「あっ、伊犂江さんに蟻田さん!」
「……!」

 当の本人である伊犂江優璃と蟻田利佐子が、その姿を現したのである。薄い夏服へ衣替えした彼女達は、その均整の取れたプロポーションを遺憾なく発揮し、男女問わず羨望の視線を集めていた。
 ――そして。その視線は、Rに向かう嫉妬と憎悪の色まで帯びている。その眼光を肌で感じたRは、夏場とは思えない寒気を覚えていた。

「なんかこっちの方が騒がしかった気がしたんだけど……何かあった?」
「い、いいや別に。何もなかったよ、ねぇ真殿君」
「へ……あ、あぁ、大したことはない。もう済んだことだ」
「ふぅん……?」
「そ、それより誕生日って今日だよね。何もプレゼントとか渡せないけど……おめでとう!」
「……うん! ありがとう、飛香君っ!」

 大雅と共に、騒ぎの原因を必死にごまかし、Rはその過程で優璃の誕生日について言及する。それに気を良くした彼女は、ぱぁっと笑顔を咲かせて周囲を悶絶させた。
 彼女の美貌と愛嬌は、遠巻きに見ているだけの生徒達すら魅了しているようだった。

「今回はあの事件の後……ということになりますから、その話題でパーティは持ちきりになるでしょうね。『事件に巻き込まれて傷心のお嬢様に優しくする』という卑劣なポイント稼ぎに出る輩は絶えないでしょう」
「あははー……仕方ないとはいえ、誕生日パーティって毎回疲れるんだよねぇ。しかも傷心って言われても……私達みんな、ゲーム世界にいた時のことな
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