第20話 終わらない憎しみ
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ただけで何も特別なことは――」
「なぁにがただいつも……だッ! ブチ殺されてぇのかてめぇ!」
「そうだそうだ! 鷹山さんがその『いつも通り』にすら手が届かないと知っていてなんてことほざき……べげっ!」
「てめぇも黙ってろ! ……とにかく夏休みに入ってさらに調子こく前に、ここらでいっぺん灸を据えてやらねぇとなあァ!?」
「えー……と……ぁあはは、どうしよ……」
痛い所を味方に突かれた宗生は、取り巻きの一人を殴り倒してRに迫る。その威圧感に溢れた眼光を前に、当人はどう弁解したものかと苦笑いを浮かべていた。
「いい加減にするのはお前だ、鷹山宗生!」
「げ……! ぶりっ子野郎!」
「誰がぶりっ子野郎だ、この不良。夏休みを前にして浮かれているのだろうが、学校の風紀を乱す奴は許さんぞ」
「……チッ! あぁつまんねぇ、行くぞお前ら!」
「は、はい!」
――すると、そこへ。生徒会の腕章を身につけた、真殿大雅が現れた。その後ろでは、大雅ファンクラブの女子達が汚物を見るような眼で宗生達を睨みつけている。
さすがに、多勢に無勢。それにこれだけ人が集まれば、いずれ教師に勘付かれさらに面倒になる。
不良の勘から、その展開を予見した宗生は、露骨な舌打ちをしながら取り巻きを連れて立ち去っていった。そんな彼に大雅がため息を零す一方で、Rはホッと胸を撫で下ろしている。
「全く……なんと月並みな奴らだ」
「あはは……でも、おかげで助かったよ。ありがとう、真殿君」
「……勘違いするな。お前が下手に喧嘩でもして怪我をするようなことになれば、伊犂江さんも今日のパーティを素直に楽しめんだろう。お前のような陰湿オタクにも、心を砕くような人なんだからな」
「はは……そうかもね」
笑顔で礼を言うRに対し、大雅は目を合わせることなく冷たくあしらう。だが、横目でちらりとRを一瞥するその表情は、何処と無く安堵するように緩んでいた。
――今日、優璃は自身の誕生日を祝う、伊犂江グループ主催のパーティに、主賓として参加することになっている。
毎年開かれるこのパーティでは、グループ傘下の企業が大勢参加しており、その御曹司達も必ず出席している。優璃は毎度、その御曹司達からアプローチを受け続けているのだ。
当然そのアプローチの一環として、誕生日プレゼントなども多数送られてくる。優璃は立場上無碍にもできず、それを受け取り続けてはいるのだが……あまりにしつこいと、常に側に控えている利佐子が睨みを利かせて追い払ってしまうらしい。
執拗な男共に対する露払いとして優璃の側にいる利佐子だが、彼女自身もグループの重役の令嬢。当然、彼女に言い寄る御曹司も少なくはないのだが、下心を見透かされ辛辣な言葉で撃退されるケースが後を絶たないようだ。
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