第19話 創造主の破壊
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ずに済んだことに安堵するように、表情を緩める。宗生は……まだ伸びていた。
「……全く。いつもいつも、伊犂江さんを困らせる奴だ……」
「そういうあなたも、気が気でなかったようだけど?」
「あ、あいつに何かあった時の伊犂江さんが気掛かりだっただけです」
あれほどRを毛嫌いしていた大雅も、心底安心したような面持ちだ。その様子を睦都実に指摘された途端、眉をへの字に曲げる彼の貌は……微かに、照れの色が滲んでいる。
「……」
そんな彼らを一瞥するRは。
永い眠りから覚め、一足先に冒険を終えた彼らに向け、微笑を浮かべた。
「……ただいま、みんな」
誰に向けたわけでもなく、ただ独り言のように呟かれた、その言葉は。優璃の嗚咽や信太達の歓声に掻き消されていく。
「……うんっ」
だが、それでも。最も彼のそばにいた優璃だけは、しっかりと聞き取っていたようだ。
彼の胸元に顔を埋め、啜り泣きながらも。彼女はRの言葉に頷くように、頭を擦り付けていた。
そんな彼女を見つめ、Rの胸中にようやく実感が生まれる。もう、あの夢は終わったのだと。
◇
「……どうだ、彼の様子は」
「間違いありません。彼は、覚えていますね」
Rの覚醒に沸き立つ病室。その空間を遠巻きに眺めるキッド・アーヴィングの隣には――患者服に袖を通した、オールバックの青年が佇んでいた。
壁に背を預け、腕を組む彼……アレクサンダー・パーネルは、キッドの報告を聞くと憂いを帯びた表情を浮かべる。
「彼には、辛い記憶を残してしまったな」
「ギルフォードを消滅させたあの子の影響で、解析班のハッキングが完了する前にログアウトしてしまいましたからね。ログアウト対象の記憶を抹消――という、我々のプログラムには引っかからなかったのでしょう」
「我々に頼らず別の手段でログアウトしたんだ、当然だろう。……尤も、私はそのおかげで命拾いしたわけだが」
自嘲するようにほくそ笑み、アレクサンダーは親友達に揉みくちゃにされているRを、ただ静かに見つめる。穏やかな笑みを浮かべる彼の貌は、憑き物が落ちたかのようだった。
(ギルフォードを斃し、仇を討ったことで心が安らいだか。……そうだ、君はそれでいい)
自分を除いてただ一人、妹を愛してくれた少年。いつかは弟になっていたかも知れない彼を、アレクサンダーは慈しむような眼で見つめていた。
「あなたのアバター……『オーヴェル』の死亡から、約57秒。解析班の干渉では、あと2分は必要でした。……奇跡と言う他に、言いようがありませんね」
「結局、あの子がいなければ民間人全員の生還も、私の脱出も不可能だったということか。……ふふ、これをどう上に報告したものかな」
「しかし、彼の処
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