第19話 創造主の破壊
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トの体が吹き飛んでいく。鎧の各部から火花を散らし、地を転げ回る彼は、情けない呻き声と共に……仮面と鎧を剥がされ、ただのアドルフ・ギルフォードとなっていった。
「あぁ、はぁあぁ……! 違う、違う違う、こんなはずでは……こんなはずではなかった! 私の物語は……英雄譚は、悲劇で終わらねばならないのに……!」
変身を解除された老紳士は、半透明となった自分の手を見遣り……HPの全損を、否応なしに悟らされた。
彼がそれを受け入れるのは容易ではない。だが絶対に、否定だけはできないのだ。
この世界を創ったのは、彼自身なのだから。彼が自ら、己を創造主と称したように。
「なぜだ、なぜ誰も私を認めない!? 私はこんなにも……こんなにも! 美しい世界を築き上げたというのにッ! 世は、世は! 私だけの世界に閉じこもることすら許さないというのか!? 冥土の土産に、至高の物語を拝むことすらッ!」
「……」
「人は皆酔いしれた! 私の世界という夢の中で、幸せでいられたはずなのだ! 飛香R! 君もその一人だろう!? なんとも……なんとも思わないのか! この私を、創造主を殺めることを!」
だからこそ、他者を責めるしかなかったのだ。
ギルフォードは消滅しかけている状態の中、地を這いずりグランタロトに迫る。Rはそんな彼を、憎しみとも哀しみともつかぬ眼差しで見下ろしていた。
「……思うさ。おかげで、悪い夢から覚めることができる」
「はっ……!?」
「――夢は、いつだって楽しくなくちゃいけない。それは、悲しいものであってはならない」
Rはブレイブドライバーを腰から取り外し、変身を解除する。露わになったその素顔は、憂いの色を帯びていた。
諸悪の根源を前にして、彼は憎しみに振り切ることもできず。ただ苦々しい面持ちのまま、背を向ける。
ギルフォードが言う通り、自分も幻想の世界に酔いしれた者の一人でしかなく。そんな自分のために、大切な人を犠牲にしてしまったのだから。
(ソフィア……)
Rはギルフォードを一瞥もせず、彼から視線を外して電脳空間の空を仰ぐ。その後ろでは――
「……ぁあ……あぁああ……! そんな……嫌だ! 私はまだ、誰にも……!」
――誰にも、そう、目の前にいるRにすらも看取られることなく。全ての災厄を振りまいた男はただ独り、光の粒子と化していった。
Rの背に伸ばされた手が、指先が、消えていく。彼が振り返った時には、もう――そこには、何もなかった。
ただ、自分を肯定してくれる世界が欲しかった。それだけの男はもう、現実世界にも、仮想世界にもいない。
『ホストのデータが破損。フルダイブを強制終了します』
その直後。強制ログアウトが始まった瞬間と同じ、無機質な音
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