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Darkness spirits Online
第16話 白銀の帝王
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ウトが済んでいないんですっ!」
「ねぇ起きてよ! ねぇったら、返事してよっ! 飛香君、飛香君っ!」
「お嬢様っ!」

 そして、目元を潤ませながら懸命に揺さぶるのだが……Rの体は、糸の切れた人形のようにぐったりとしたままだった。
 強引にヘブンダイバーを外せば、その瞬間に電磁パルスが発動して死に至る。キッドからそう聞かされていた利佐子は、懸命にRから優璃を引き剥がした。

「……飛香R様につきましては、まだログアウトまでに若干のタイムラグがあるようです。いずれは彼も目覚めるでしょうが、もう暫く掛かるかと」
「いずれは……って、一体いつなんですか!?」

 そこへ、キッドを含む他の人々も追いついてきた。彼らの先頭に立ち、声を掛けてくるキッドに、優璃はいつになく取り乱した様子で訴える。

「具体的な時間を申し上げることはできません。ですが、すでに解析班の手は彼のアバターにも及んでいるはず。焦らずとも、必ず彼は目覚めますよ」
「……飛香君っ……」

 だが、「必ず目覚める」というキッドの言葉を受け――僅かに、平静を取り戻した。それでも不安をぬぐい切れなかったのか、懸命に手を握りながら、祈るように目を伏せている。

 そんな彼女の姿を見れば、伊犂江優璃という少女が、どれほど飛香Rという少年を想っているのかは明らかだった。優璃の形相を前に、男子達はこの状況下でありながら、胸中に苛立ちを募らせる。

「……けっ。あのキモいゲームオタクのことだ。『まだゲームしたいー』って、駄々こねてんじゃねーの」

 ――そんな彼らの、口には出さないまでも心のどこかで思っていた本音。それを零したのは、鷹山宗生だった。

「ちょ、ちょっと鷹山!」
「……そーそー。もしかしたら、もう目が覚めてんのに狸寝入りしてんじゃねーの? 伊犂江さんにかまって欲しくてよぉ」
「きったねぇ野郎だなァ、おい」
「あなた達っ……!」
「そ、そんな言い方ないんだねっ!」

 この非常時に露骨にクラスメートを軽んじる彼の物言いは、当然ながら非難の視線を集める。だが、Rに対し反感を持っていた一部の男子達は、宗生に続くように彼を罵倒する。
 そんな彼らの言い草に、睦都実や大雅、信太達が眉を吊り上げ声を上げようとする――その時だった。

「……最っ、低」

 感情を押し殺した、冷ややかな呟き。普段とあまりにも違う声色ゆえ、周囲はそれが伊犂江優璃の声であると、すぐに気づくことができなかった。
 彼らが声の主に気づいた時には――すでに。優璃はRの手を握ったまま、涙を目尻に貯めながら、怒りの形相でクラスメート達を睨んでいた。

 その眼力や、「学園の聖女」を敵に回すような物言いをしてしまった事実に直面し、男子達は今になって口をつぐむ。だが、もはや遅かった
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