第16話 白銀の帝王
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あなたは、私達を助けるために頑張ってくださったんでしょ? 助けてくれた人を責めるなんて、出来ません!」
「そうです! それにあなたは、アーヴィングコーポレーションの関係者である前に、FBI捜査官じゃないですか!」
「……ありがとうございます」
その苗字を聞けば、誰もが気づくことだった。
――キッド・アーヴィング。彼はFBI捜査官にして、アーヴィングコーポレーションの御曹司でもあるのだ。
ギルフォードがアーヴィングコーポレーションの元社員であったことは、すでに周知の事実となっている。そんな男を抱え込んでいた企業の者となれば、相応の誹りは避けられない。
キッド自身も、それは覚悟していたようだが――優璃と利佐子は、あくまで自分達を助けに来たFBI捜査官として、キッドという男を見ていた。その後ろにいる人々は、複雑な面持ちだったが。
――実のところ。アーヴィングコーポレーションの社長だけでなく、優璃の父である伊犂江グループの会長もまた……ギルフォードに加担していた一人なのだが。
優璃自身も利佐子も、その真相を知る由もなかった。
「……あっ、そうだ利佐子! 飛香君はどうしたの? さっきから姿が見えないんだけど」
「あっ……」
真実を知らない優璃は、キッドに疑いの眼差しを向ける周囲の人々を一瞥し、話題を変えようと思い――ふと。この中にいるはずのクラスメートが一人いないことに気がつく。
飛香R。その所在を問われた利佐子は、答えるべきか迷うように視線を泳がせる。だが……その様子を間近で見て、気づかない幼馴染ではない。
「……起きて、ないの?」
「――っ! お嬢様っ!」
「伊犂江さん! まだ寝てなきゃダメよッ!」
「お、おい伊犂江さんっ!」
それが意味するものは何か。そこまで想像した途端、優璃は弾かれるようにベッドから飛び出した。睦都実やクラスメート達の制止も聞かず、躓きながらも廊下を走り出す。
品行方正な普段の彼女からは、想像もつかない姿だった。一週間も寝たきりだった体は思い通りに動くことはおろか、まっすぐに走ることさえままならない。
「あぐっ、うぅっ!」
「お、お嬢様ぁっ!」
あちこちにぶつかり、手すりや器具に引っかかり患者服を乱しながら、それでも彼女は懸命にひた走る。
「はぁ、はぁっ……あ、飛香、君っ……飛香君っ!」
そうして白い柔肌の節々を露わにしつつ、ようやく――優璃は、ある一室で眠り続ける少年を見つけた。
ヘブンダイバーを被せられたまま、夢の世界に囚われている飛香R。それを目の当たりにして、優璃は寄りかかるようにそこへ駆け込んだ。
「飛香君、飛香君っ! ねぇっ、飛香君っ!」
「お嬢様、落ち着いてください! 飛香さんはまだ、ログア
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