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Darkness spirits Online
第16話 白銀の帝王
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ら説明しましょう」

 そんな彼女の肩に手を置く、黒いスーツ姿の青年が現れたのは、その直後だった。利佐子に触れるその青年の出現に、周囲の男子達は殺気のこもった眼差しをぶつけるが、青年はまるで意に介さない。
 ブラウンの髪を短く切り揃えた、碧眼の美男子。年齢は20歳前後だろうか。そんな彼に対する視線は男子の殺気だけではなく、女子達からの熱っぽい視線も含まれていた。

 そうして、羨望や嫉妬を一身に集める青年の美貌を前にして――優璃と利佐子は、真剣な面持ちで青年の言葉を待ち続けていた。
 すでに「意中の男」がいる彼女達にとって、青年の美しさは何の意味もなさないようだ。

 ――そして、それは青年も同じであり。絶世の美少女達を前にしながら、彼は眉ひとつ動かさず、淡々と口を開く。

「私はFBIサイバー犯罪捜査官のキッド・アーヴィング。……伊犂江優璃様を含む、五野寺学園高校の皆様に起きた事態について……私の口から、改めて説明させて頂きます」
「アーヴィング……!?」

 その名に瞠目する優璃に、深く頷きながら。

 ◇

 キッドと名乗るFBI捜査官により、林間学校のあの日に起きた出来事が語られた。

 ――今から一週間前。アドルフ・ギルフォードという科学者が率いるカルト組織が、新幹線の第2車両に催眠ガスを散布。その車両に乗り合わせていた乗員乗客85名が昏睡状態に陥った。
 ギルフォードはその全員を仮想空間にダイブさせ、自らの洗脳下に置いた上で、自身が企画した殺人ゲームをさせていた。だが、仮想空間には第2車両に居合わせたFBI捜査官も潜伏しており――現実世界から殺人ゲームを阻止しようと動いていた解析班との連携により、ゲームの強制ログアウトに成功。
 今では85名全員が、次々とゲーム世界から解放されつつある。一方、ギルフォードら実行犯達の身柄も確保された。事件は、終息に向かいつつある。

 ……というのが、キッドが語る事件の推移であった。五野高の生徒達を含む乗員乗客全員が、この説明を受けている。

 今は目覚めたばかりであるため入院している状態だが、じきに身体への異常がないと確認された者から退院していく予定だという。
 すでに病院の外は、被害者達の目覚めを聞きつけたマスコミで溢れかえっていた。さらに病院一階のロビーには、我が子との再会を切望している五野高生徒の父兄達も集まっている。彼らは互いに励まし合い、全生徒の生還を祈り続けていた。

 そんな父兄達だけでなく、優璃達がいる三階の病室にまで向けられるカメラやフラッシュから、彼女達を守るように。キッドは素早い動作で、カーテンを閉めた。

「あっ……」
「……私の父が生んだゲームが、このような悲劇を招いた。その責めを受ける覚悟は、出来ています」
「そんな……
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