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Darkness spirits Online
第15話 男達の罪
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「……っ」

 ――アレクサンダー・パーネル。
 確かに彼はそう名乗り、Rのこともソフィアのことも知っていた。間違いない。
 彼が、ソフィアの兄。仕事が多忙と言い家を空け続け、葬儀にすら来なかった……。

(……この、人が……!)

 そう思えば思うほど、二年間の中で記憶の隅に追いやっていた感情が、込み上げてくる。
 どうして彼女のそばにいてあげられなかったのか。どうして彼女を独りにしていたのか。そんなに、大切な仕事だったとでもいうのか。
 ――そんな恨み言ばかりが、衝き上げて来てしまう。だが、Rは決してそれを口にはしなかった。ただ己の感情を押し殺し、唇を噛み締めるばかり。
 震える拳と口元だけが、彼の感情を物語っていた。

 R自身も、わかっている。ソフィアばかりか、養父母までも死に追いやった自分に、そんなことを言える資格がないことは。むしろ、罰せられるべきは自分なのだろう。
 ――そう思えば、自分たちを助けに来たFBI捜査官だという彼が、あれほど殺気を露わにして襲いかかってきたことにも合点が行く。あの老紳士を欺く演技にしては、真に迫り過ぎていた。

「……君の言いたいことはわかる。ソフィアが言っていた通り、嘘をつくのが下手な人間だな、君は」
「……!」
「とにかく、『甲冑勇者』であるという理由から自衛能力があると本部に見なされ、ログアウトを先送りにされた君には……今のうちに全てを話す必要があるだろう。何もわからないままでは、『奴』の襲撃に備えることもできまい」
「……あの老紳士のこと、なのか?」
「あぁ、そうだ」

 表情を読んだのか。アレクサンダーはスゥッと目を細めて、そう呟く。
 リアリティ・ペインシステムを持つ「DSO」の存在をニュースで知ったソフィアは当時、そんな危ないゲームをしていないかRに尋ね――「バリバリやってる」と顔に出ていた彼に詰め寄ったことがあった。
 そんなことまで、彼は聞き及んでいたらしい。ソフィアと彼は、ごく稀に電話で話せる機会がある程度だったらしいが……。

「この世界に潜入し、NPCを演じて奴の目を欺き、この世界を構築しているデータを解析してFBI本部に転送。あとは本部がデータをもとにこの世界をハックし、被害者達をこの世界から解放する。……それが、私の任務だ」
「……あなた達は、この事態を予見していたのか!?」
「ある程度は、な。具体的に掴めていたわけではないが、『奴』の行動原理から推測して……君達が乗り合わせていた車両に張っていた」
「……!」

 アレクサンダーはそんなRの思案をよそに、この一連の事態の真相を語り始める。外部の人間――FBIが、この事態が起きる可能性をキャッチしていた事実に、Rは瞠目した。

「奴の名は――アドルフ・ギルフォード。元『DS
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