第15話 男達の罪
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う理由から、日本へと引き返すことになった。
彼女達への弔いを、最後にして。
だが。
パーネル家の葬儀に参列していた者達の中に、「兄」の姿はなかった。
ソフィアを天上へ導く為、彼女と顔馴染みだった神父がイエスに祈りを捧げ、十字を切る一方。彼女が最期まで、自分の味方であるとRに語って聞かせていた「兄」は。妹の葬儀にさえ、姿を見せなかったのである。
――その事実に胸を痛めながら、日本へ帰ってきた彼は。
留学前とは別人のように暗くなり、プロゲーマーを志望していた頃から一転し、ゲームの話題に口を閉ざすようになっていた。
留学先で起きた事件はクラスにも知れ渡っており――無邪気な好奇心に由来する質問攻めにも遭ったのだが。その全てに答えられず、沈黙を続けていくうちに……やがて友人達は、Rのもとから離れていった。
暗くなった少年にいつまでも構うより、明るい友人と付き合う方が気が晴れるからだ。
そうしてRは、昔のように孤立していく……はずだった。
しかし。二人だけ、Rから離れなかった少年達がいた。
鶴岡信太と、真木俊史である。
悪名高い変態オタクとして、当時から白い目で見られていた彼らだったが――Rにとって彼らは、最後に残された光だったのだ。
そんな彼らと過ごすうちに、彼の心は少しずつではあるが、本来の自分を取り戻し始めていた。
しかし、VRMMOに復帰するには、まだ傷は深い。かといって、自分と深く関わってきたゲームから完全に離れることもできなかった。
この時代においてはレトロと呼ばれる、前時代のTVゲームに手を出すようになったのは、その頃である。
VRMMOのような臨場感には程遠いが……夢は夢であるとわかり、本当の世界を見失わない、絶妙な距離感があった。
ゲームは、夢は、いつだって楽しくなくてはならない。それは、悲しいものであってはならない。
そう信じる彼にとっては、夢と分かり切った明晰夢こそ、心地よい世界なのだろう。夢と現実が曖昧となり、本当の血が流れる幻想世界を味わった、彼にとっては。
――以来、彼はTVゲームを嗜みつつ、信太や俊史とつるむようになり。二年の歳月を経て、ようやく前を向き始めていた。
「ハピホプ」への復帰こそ出来ていないが……友人達に付き合う形で「Love Heart Online」を始め、VRにも再び触れるようになった。
その傍らで。かつてソフィアがそうしていたように、花を愛でる日々を送りながら。
だが。
今になって。
追い縋る十字架のように――最期まで姿を見せなかった「兄」。アレクサンダー・パーネルが、Rの前に現れたのだった。
彼らの運命を引き裂いた、この「DSO」の世界で……。
◇
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