第15話 男達の罪
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った。洗脳を回避するという最低限の部分でしか性能を発揮できず、ここでNPCのふりをしながら、隙を見計らって地道に解析を進めるしかなくなってしまったんだ」
どうやら、アレクサンダーはこの世界から乗員乗客を救出するまで、ずっと裏で動き続けていたらしい。
「こうなってしまった以上、ゲームの進行は奴に『プレイヤー』として選定されていた君に託すしか無い。……我々はこの時点で、数人の死者が出ることを覚悟せねばならなかった。この世界がデスゲームであることさえ知らない、一介の高校生である君が、全てのNPCを死なせずにゲームを進めてくれるとは思っていなかったからだ」
「……ギルフォードも、オレが『DSO』の元プレイヤーだとは想定していなかったからな」
「そう。奴がたまたま、『DSO』の元トッププレイヤーである君を主役に選んでいなければ……今頃、天坂総合病院から多くの死者が出ていたところだ。そういう意味では、君は真のヒーローと言っていい」
「……オレは、ただ何も知らずにシナリオを進めていたに過ぎないよ」
「そうだろうな。だが、そんな君のおかげで多くの人々は無事に解放された。……そんな君に私怨混じりの剣を向けた私こそ、許されざる者なのかも知れんな」
再び自虐的な笑みを浮かべる彼は、「オーヴェル」の鎧を纏う自分の手を一瞥する。この手が罪を犯したのだと、己に言い聞かせるかのように。
「……ふふ。真に怨むべき相手は誰か、わかっていたはずなのにな。……私は任務中でありながら、筋違いな私怨で君と向き合っていた……」
「でも……! でも、アレクサンダーさん! オレは、あの家の……おじさんも、おばさんも……ソフィアも!」
そんな彼に。Rも、自分の罪を懺悔するかのように訴える。しかし、アレクサンダーは最後までそれを聞き入れようとはしなかった。
「知っているさ。あの養父母らに代わり、ソフィアのそばにいてくれていたことは。唯一の味方だったはずの私に代わり、あの子を慰めてくれていたことは……」
「アレクサンダーさん……」
「R君。私は……君を、君を許したい。君は、私を許してくれるか?」
もはや、アレクサンダーの眼にRへの憎しみはなく。今度はむしろ、Rに許しを乞うているようだった。
そんな彼に対する答えなど――今もソフィアを想っているRには、分かりきっている。
(アレクサンダーさん……ソフィア……)
一歩一歩踏み出していき、やがて立ち止まり。Rは、アレクサンダーが自分に向けたものと同じような――優しげな眼差しを向けた。
「アレクサンダーさん。オレは、あなたを――」
そして、互いに罪を背負いあった二人が、前に進めていけるように。
Rは己の手を、静かに差し出していた。その手を握るべく、アレクサンダーも導かれる
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