第12話 赤と青、剣と剣
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ら、それを埋めるだけの攻撃に転じられずにいるのである。
何度攻撃を潜り抜けて斬撃を加えても、その直後にはベリアンセイバーの一閃が迫ってくる。攻撃より回避を優先しないと、反撃で致命傷を受けかねない状況なのだ。
Rは何度斬りつけてもほとんどダメージ一つ通らないが……ベリアンタイトの攻撃は、たった一発でも強烈なダメージへと繋がる。しかもベリアンタイトの方は、攻撃されながら斬り返すことも可能。
その圧倒的なスペック差を前に、Rは徐々に……そして確実に、追い詰められ始めていた。
「ヒカルさんっ……!」
「くそっ、あのままではいずれ……!」
「……っ」
この戦況を目の当たりにして、テイガートは苦虫を噛み潰したような面持ちを浮かべている。そんな彼を一瞥し、ネクサリーは僅かに逡巡した後――決意を固めたように、強い眼差しで後方を見遣った。
「ごめんなさい、テイガート様。……少し、ここで待っていてくださいますか!」
「ネクサリー!?」
「すぐに戻りますっ!」
そして、言うが早いか。テイガートを床に降ろすと、素早く屋敷の奥へと走り出していった。そんな彼女の背を見送る騎士は――部下の胸中を察し、眼を見張る。
「まさか、あいつ……!」
その直後。吹き飛ばされたRの体が、テーブルを弾きながら壁に叩き付けられた。
「がぁっ!」
「軽く牽制で蹴っただけで、この威力か……。さすがだな、『甲冑勇者』というものは」
自らの全身を見やり、力の奔流を実感するオーヴェル。そんな彼を睨み上げながら、Rは割れたテーブルを杖代わりに立ち上がる。
「……そん、な……モノ、くらいでっ……!」
「今の一発は急所に入ったはずだが……やはりVRだと、リアルのようには行かないか」
「……!?」
そんな彼を一瞥するオーヴェル――ベリアンタイトは、追撃のために剣を振り上げる。一方、Rは彼が呟いた「NPCとしてはありえない台詞」に目を剥いていた。
「ヒカル君っ!」
その時。Rを追うように窓から飛び込んできたユリアヌが、彼を庇うようにベリアンタイトに立ちはだかる。
だが、紫紺の勇者に手心を加える気配はない。そのまま、あの鎌鼬を放つ体勢に入っている。
「ユリアヌ!?」
「ごめん……戦いの最中に、立ち止まったりして。でも、もう大丈夫だから」
それでも、彼女に怯みはない。毅然と拳を構えるその背中は、可憐な外見とは不釣り合いな凛々しさを滲ませていた。
「……もう、花も。大切な人達も、傷つけさせない」
その言葉は。ユリアヌ・リデル・イリアルダのものか。
――それとも、伊犂江優璃のものか。
(伊犂江さん……!)
その、どちらともつかない言葉を紡いで。彼女は、ベリアンタイト
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