第12話 赤と青、剣と剣
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飛んできたのである。
頭上から打ち下ろされた風の刃。それを感知したRは、ユリアヌを抱いたままさらに前方に転がり回避する。
直後、彼らがいた場所は地面ごと切り裂かれ――その近辺に広がっていた花畑が、細切れにされていく。
「あ……っ!」
宙に舞い上がる花びら。鎌鼬の余波に蹂躙された花々が、Rとユリアヌの視界を埋め尽くした。
――その光景を目の当たりにした少女は、悲痛な表情になり。足元に落ちた花びらの切れ端を、震える手で拾う。
「……っ」
痛ましい面持ちで無残に裂かれた花を抱き締め、彼女は暫し目を伏せる。そんな彼女の横顔を、Rは神妙な眼差しで見つめていた。
(……ユリアヌという「キャラクター」は本来、戦いを好む好戦的な少女であり、花やドレスには全く興味がない変わり者。だけど、この子は……)
彼女は戦いを始める時、ドレスの裾を破り捨てていた。着飾ることに無頓着である点は、変わっていない。
だが――花を蹂躙されたことに心を痛める彼女の貌は。間違いなく、伊犂江優璃の人格による「変化」であった。
(……伊犂江さん……)
知らない世界に連れて来られ、似合わないキャラを演じさせられ、戦わされ、目の前で大好きな花まで踏み躙られ。そんな苦境に中に立たされ続けている彼女の苦しみは、いかばかりか。
彼女がこの世界の出来事を全て覚えているかはわからないが……もし、記憶が残るのだとしたら。その心に、深い影を落とすことになる。
(能力差は歴然。戦局は不利だろう。……だけど!)
――ならば、これ以上。その傷を深めるわけにはいかない。Rは反撃に転じるべく、地を蹴り窓辺に跳び上がった。花を抱いているユリアヌを、この場に残して。
「ヒカル君っ!?」
それが、かつて目指した「より確実にクリアする」ことから遠のく道と知りながら。
◇
「くそっ……あの男、一人で……!」
「テイガート様っ!」
ネクサリーの肩を借り、辛うじて立ち上がるテイガートは――剣を上段に構え、単身でベリアンタイトに挑むRを苦々しい面持ちで見守っていた。
一進一退の攻防のようであるが……戦局は、見た目以上に苦しいと言える。
立ち回りそのものは、Rの方が身軽で素早い。ベリアンタイトの斬撃を紙一重でかわしながら、着実に反撃を加えている。
――しかし、ベリアンタイトの方はまるでダメージを受けていない。全くの無傷というほどではないが、ほとんどの攻撃に対して「怯まない」のだ。
それゆえ、Rに斬られながら反撃に転じることが可能なのである。生身のキャラから受ける攻撃に対し、仰け反らない「スーパーアーマー」と呼ばれるスキルが発動しているのだ。
そのため、圧倒的な防御力の差がありなが
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