第12話 赤と青、剣と剣
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みて、ようやく。
伊犂江優璃という少女は、自分が飛香Rという少年に「恋」をしていると気づいたのである。
そして、その瞬間から――間も無く。彼女は、予想だにしなかった事実を知るのであった。
「え!? 飛香君、『ハピホプ』やってないんだ!?」
◇
「……来るッ!」
一閃。
ベリアンタイトの鎧を纏う、オーヴェルの剣が煌めきを放ち――咄嗟に身を屈めたRとユリアヌの頭上を、鎌鼬が通り過ぎた。
彼らの背後では、切り裂かれたテーブルが無残に飛び散っている。それを一瞥する猶予もなく、第二波の鎌鼬が飛んできた。
「くっ!」
「うっ!?」
今度は、縦の剣閃。Rは一瞬反応が遅れたユリアヌを横に突き飛ばし……その反動を利用して、自分も反対方向へ転がった。
二人の間を裂くように、床に溝が生まれたのは、その直後である。大理石の床を豆腐のように切り裂くその鎌鼬は、間違いなくオーヴェルの技であった。
「……さぁ、第2ラウンドを始めようか」
「く……!」
能力の差は、歴然。それを目に見える形で示すかのような、二連撃であった。剣で防御しようものなら、その刀身もろとも真っ二つに両断されていただろう。
――ゲームバランスも何も、あったものではない。これはもう、「DSO」の舞台を借りた殺し合いそのものだ。
(だけど……死なせるわけには、行かないんだ! 誰一人ッ!)
それでも、Rは一歩も引き下がることなく、剣を構えて立ち上がる。
この世界で生きているNPCは、誰一人として斬らせない。死なせない。その決意を、眼で訴えるように。
「……」
そんな彼の瞳を、刃の如き眼光で射抜くオーヴェルは――鉄の仮面にその貌を隠したまま、宝剣「ベリアンセイバー」を振り上げる。
その紫紺の刀身からは、禍々しい靄が滲み出ていた。
(……「DSO」の設定なら、今もあの剣にはイリアルダ家に伝わる「魔獣」が封じ込められているわけだが……)
果たして、そこに潜む存在は何なのか。今となっては、過去のプレイ経験など全く役に立たない。
Rがこの戦いの先に在るものに、目を向けようとした――その瞬間。
「ハァッ!」
「くっ――!」
ベリアンセイバーのさらなる斬撃。乱れ飛ぶ鎌鼬の嵐をかわし、Rはユリアヌを抱えて窓から外へと飛び出していく。
「きゃあっ!?」
「掴まって!」
激しく砕け散る窓ガラスの破片が、イリアルダ邸の庭に着地した二人の頭上に降り注ぐ。Rはユリアヌの上に覆い被さり、その破片の雨から彼女を庇った。
「ヒ、ヒカルく……!」
「――まずいッ!」
だが、イリアルダ邸から飛び出しても、ベリアンタイトの攻撃は続いている。ガラスの破片に紛れ、追撃の鎌鼬が
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