第12話 赤と青、剣と剣
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話する帰宅部など、最下層もいいところだろう。
……だが。優璃にとっては、違っていた。
花を弄び、踏み躙る男。欲に塗れた眼で自分を見る男。そんな者達にばかり囲まれていた彼女にとって――慈しむように花を守る彼の姿は、衝撃的だったのである。
草毟り、施肥、花がら摘み、植栽。土に汚れながら、美化委員の本分以上に花壇を整備する彼の横顔を――気づけば、無意識のうちに追い求めるようになっていた。
やがて、常に行動を共にしている利佐子と2人で、彼の仕事を見守る日々が始まったのである。
手伝おう、とは何度も思った。隣に座り声を掛け、お喋りしようとは何度も思った。だが、どうにも気恥ずかしく……彼女は幼馴染と共に、物陰から見つめるばかりであった。
――思えば、男から声を掛けられることなら何度もあったが……自分から掛けたことなど一度もない。話しかけようにも、きっかけを掴めずにいたのだ。
しかも、こういう時に取り持ってくれるはずの利佐子まで、「殿方に自らお声を掛けるのも、社会勉強です」という意地悪に出たせいで、彼女はますます話し掛けられず……そのまま半年が過ぎたのであった。
――自分の胸中に芽生え始めた気持ちに、説明がつかないまま。
そんな折、彼女は数少ない友人達とゲームの話題で談笑するRを目撃する。そこで彼女は初めて、彼が「ゲーム好き」であることを知った。
彼が好きなゲームに詳しくなれば、お話するきっかけを作れるかも知れない。
そんな考えを抱いた彼女は、それまで見向きもしなかったゲームに関心を向け――当時から大人気となっていたVRゲーム用ヘッドギア「ヘブンダイバー」を利佐子と共に購入。
そして、一目で気に入った「Happy Hope Online」こと「ハピホプ」のプレイヤーとして、ゲームデビューを果たし――電脳世界に咲き乱れる花畑に、二度目の衝撃を受けるのだった。
見たことのない世界での冒険。摩訶不思議な花々。
作り物とは到底思えない、その「異世界」とも言うべき花の楽園に魅了された優璃は――付き合いで「ハピホプ」を始めた利佐子と共に、VRMMOの世界へとのめり込んで行く。
――これで、ゲームにも詳しくなった。もう、気後れする心配もない。これからようやく、私は彼と……。
高校進学を機に、優璃はそう思い立ち。晴れて同じクラスとなったRに、初めて声を掛けた。
その日からようやく、優璃はRとの交流を始めることが出来たのである。
彼女の胸中を知らない周囲の男子達が「なぜあんな奴を」と妬む中。優璃はこれまでの見ているだけだった時間を取り戻すように、Rとの関係を深めるべく、積極的に話し掛けるようになっていった。
――そうした自分の行動と、その時に感じた甘く切ない感覚。それを顧
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