第10話 宝剣の片割れ
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ぱり、変だな)
そんな彼女に、微笑で返しつつ。Rはユリアヌと優璃の間にある「人柄」の隔たりに、他のNPCにされた者達とは違う何かを感じていた。
大雅や利佐子のように、キャラクターの人格と本来の人格が、ある程度マッチしている中で……ほぼ正反対な優璃とユリアヌの組み合わせは、異彩を放っている。
あまりマッチしていないというだけなら、海太郎が扮するマクセル等にも通じるところはあるが……その点を差し引いても、やはり優璃が扮しているユリアヌは浮いていた。
(伊犂江さんに対する「配役」だけ、他のNPCとは違う法則で決められているのか? だとしたら、どうして……?)
疑問は尽きないが、今はそれを解き明かせる状況ではない。Rは違和感を顔に出さないよう取り繕い、愛想笑いを浮かべようとする。
「はは……まぁ、手合わせは機会がある時に、ね」
「うん! ――ところでさ。ヒカル君って……今、恋人とかいたりするの?」
「……ヴェ?」
「ユリアヌ様……!?」
だが。次に出てきた彼女の言葉に、またもや変な声を漏らしてしまった。
異性が恋人の有無を確認。それは世が世なら、「変な勘違い」を生みかねない質問だ。
この世界にもそういう考え方はあるという設定なのか、テイガートが信じられないような表情で立ち上がってくる。
「もし、さ……あ、いや……うん。アタシ、強い人とか、結構イイなって……いや、これは違うかな……あ、えっと、なんて言ったらいいかな……」
髪の端を指先で弄りながら。ユリアヌは急に口籠ると、Rから目を逸らして消え入りそうな声で呟く。
男勝りな普段の彼女からは、あまり想像のつかない仕草だった。「DSO」にも、こんなシーンは本来ない。
「えっと……だから、その……あんもう! とにかく、アタシを助けた騎士様なんだから、それ相応のモノをあげなきゃいけないわよね!」
「……? え、えっと、オレは別に……!」
「お父様! ヒカル君なら上げてもいいよね! あの『宝剣』!」
すると、ユリアヌは話題を切り替えるようにマクセルに視線を移す。その口から出て来た言葉に、Rも目の色を変えた。
(……!)
――「DSO」のシナリオモードならこのあと、イリアルダ家に伝わる「宝剣」を巡り、ライバルとなる剣士と戦うことになる。
その剣士は片割れとなる二本目の「宝剣」の持ち主であり、彼との戦いを経て、ラスボスである魔獣との決戦が始まるのだ。
クライマックスは近い。イリアルダ家秘伝の宝剣が彼女の口から語られたことで、Rはそう予見し。周囲に見えないテーブルの裏側で、独り拳を握り締める。
(もう少し、もう少しだ。もう少しで、皆が……!)
――その時だった。
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