第9話 破天荒な姫君
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ただ、こちらが向こうを助けても向こうがこちらを助けてくれる、とは信じきれない。
ネクサリーはともかく、テイガートに仲間意識はあるのだろうか。「DSO」なら文句を言いながらも加勢に来てくれるのだが、もはや彼は自分が知るテイガートではない。
利用するだけ利用して、窮地に陥った瞬間に見捨てる可能性もある。NPCに背中を預けると言う行為が、この世界において吉と出るか、凶と出るか。
――それは、未知の境地であった。
(でも、今はッ……!)
しかし、凶と出たとしても。Rの背に、引き返せる道はない。たとえこの先が罠だとしても、生き延びるためには罠すらも踏み越えるしかないのだ。
自分が生きねば、誰一人救えないのだから。
「――おぉおッ!」
Rは開戦の合図とばかりに燭台を叩き壊し、洞窟の中に駆け込んでいく。迷いはない。全て、叩き伏せるのみ。
「な、なんだこのガキ!」
「イリアルダの回し者かァ! 野郎共、ぶち殺せェッ!」
見知った顔の山賊達が、槍や斧を持ち出して迎撃してくる。皆、Rや信太達を睨んでいたクラスの男子達だ。
(山賊役までやらされているのか! ――みんな、ごめん!)
その攻撃の数々を受け流し、次から次へと腹に重い一発をお見舞いしていく。本来なら無惨に斬り裂かれているはずの彼らは、腹を抑えて続々と気絶していった。
――山賊達の人相を目の当たりにした瞬間。Rは咄嗟に剣を鞘にしまい、「不殺」で戦う方向に切り替えたのだ。
例えNPCの敵という役割であろうと、リアリティ・ペインシステムでクラスメートを苦しめるわけにはいかない。
「はあっ!」
鞘の先端が、勢いよく振るわれたことで発生する遠心力が、強力な衝撃を生み――山賊のどてっ腹に突き刺さる。
「ぅぐはあッ!」
Rの一撃に昏倒し、山賊――に扮するクラスメート達は次々と気絶していく。
単純な力押しだけでは数の暴力に押されるが、身をかわして攻撃をいなせば、隙は必ず生まれるもの。そこさえ突けば、攻略は容易い。
しかし、テイガートがそうだったように、山賊側も思考能力を高めていたらしい。
Rの目的が「ユリアヌの救出」と察したのか、これ以上先には進ませまいと体格を活かして、陣地防衛に徹し始めた。
決して広くはない洞窟の道を、あっという間に山賊達は塞いでしまう。この状況で斧やら槍やら突き付けられたら、迂闊に先に進めなくなる。
(……まずい! クラスメートの皆だろうと、今のテイガート達にとって彼らは全員「山賊」! テイガート達がここに来る前に、なんとか始末をつけないと……!)
「実力は確かなようだな! ご苦労だった!」
「……しまっ……!?」
――そこで山賊達の人間防壁に
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