第7話 月夜の逢瀬
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姿が、ネクサリーの胸中を擽る。
(でも、私達……)
だが。何よりも気にかかるのは、そんな彼のことが今日会ったばかりの相手だとは思えないことだった。
Rと顔を合わせた時。まるで、何日も一緒に過ごして来た大切な相手と再会できたような……そんな、胸を打つ多幸感があった。
しかし、あんな少年は自分の知り合いにはいないはず。彼自身も、あくまで初対面として自分に対応していた。
だが、自分も彼も。どこかで、「再会」を喜びあっているかのようだった。
再会も何も、会ったことすらないはずなのに。
(……私達は……)
今日一日中歩き続け、この森の中で一夜を明かすようになった今まで。ネクサリーはRと何度も語らい合い、親交を深めていた。
その交流の中で彼女は、Rと過ごす時間というものに、言い知れぬ心地よさを覚えていた。……もしかしたら。恋人ができれば、こんな気持ちになるのかも知れない。
――そんな、幸せなようで。もう一人の大切な誰かを裏切っているような、身に覚えのない罪悪感が、ちくりと胸を刺す。不思議な感覚だった。
気がついた時には既に日が暮れていて、自分達一行のリーダーであるテイガート・デュネイオンの指示により、今日はこの森で野宿となり。
明日中に町に到着することを予定としつつ、今日は休むこととなった。
――それから、Rのことでなかなか寝付けず……気づけば、ここで思考を整理しようと、水浴びに興じていた。
得体の知れない罪悪感に苛まれている間にテイガートは眠ってしまい、Rも「見張りをする」といい、木の上で一休みしている。
今の間に、一度頭を冷やそうと考えたのだ。
そして、現在に至る。
「もしかして、前世では恋人同士だったりして……はは、なんちゃって」
やがて。そう独り言を紡ごうとした、時だった。
「ネクサリー!?」
「……え?」
聞き覚えのある――いや、むしろ忘れるはずのない声。
振り返った先には、物々しい形相で剣を握る、赤い服を着た少年が立っていた。
艶やかな黒髪に、クリッとした瞳。中性的であり、どこかもの鬱げな影のある面持ち。
そう、ネクサリーが今まさに夢想していた、R本人だった。
「よかった……! ここにいたのか! 急に姿が見えなくなったから、てっきり野党達に――ブファア!」
一糸纏わぬネクサリーの裸身を前に、真相に辿り着いたRは穏やかな表情で胸を撫で下ろす――が。
乙女の問答無用かつ条件反射的キックの前には、言い終える猶予すら与えられなかった。
◇
しばらく気絶していたRが目を覚ました頃には、ネクサリーは既に体を拭いて騎士の鎧を着ていた。
「全く! ヒカルさんったらホントにホントにえ、えっ
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