第6話 一方的な再会
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。AIだ。
手が届くどころか、こうして目の前にクラスメート達が集まり始めているというのに。誰一人、本来の人格を塗り潰されている。
唯一それを認識している自分は、そのことを伝えることすら叶わない。
「……」
「ヒカル、さん? どうしたんですか、どこか痛むんですか?」
「……いや、なんでもないよ。ありがとう」
そんな歯痒さに顔を顰めるRに、ネクサリーは心配げに顔を覗き込んでくる。その甲斐甲斐しさは、まるで利佐子本人のようだった。彼女の姿をしている分、余計に強く、そう感じてしまう。
しかし、彼女の優しさは蟻田利佐子の人格ではない。ネクサリー・ニーチェスのAIによるもの。
――その事実に、Rが拳を震わせた時。
「ネクサリー、そろそろ出発だ」
「はい!」
準備を終えたテイガートが戻り、いよいよ旅立ちの瞬間を迎えることとなった。Rは名残惜しげにネクサリーから視線を逸らし、未練を断ち切るように踵を返す。
――今ここにいるのはネクサリー・ニーチェス。蟻田利佐子じゃない。そう、己に言い聞かせるために。
「なんだよ〜、美少女連れてピクニックなんて、羨ましいにもほどがあるもんねっ!」
「さっきから見てたら、なんかイイ雰囲気だったじゃねぇか! なんだよヒカル、お前さっそくハッスルかあ!?」
そして、いざ出発と思いきや。
見送りに来たダイナグとノアラグンの二人が冷やかしに掛かる。
「あ、いえ、その……! わ、私そういうことは……!」
「……」
それを受け、ネクサリーは頬を赤らめてそそくさと後退りしてしまう。余計なことを口走る二人に、Rは無言で睨みを効かせた。
「何をモタモタしている! 行くぞネクサリー! あとヒカルとやら!」
「は、はいっ!」
「ああ。……まったく、もう」
そして。テイガート率いるユリアヌ救出隊は、ようやくこの街を出発する。
陽気そのものな友人二人や、本来の人格以上に自分を嫌う騎士に、ため息をつきながら。Rはいよいよ、「物語」を動かすべく旅立つのだった。
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