第6話 一方的な再会
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、テイガートは鼻を鳴らしてぶっきらぼうに答える。
主人公にいい印象を抱いていない、という点は本来のキャラ付け通りだが、その言動はいつにも増してエスカレートしているようだった。
没落とは言え立派な貴族の人間を救うのに、薄汚い庶民の手を借りなければならない。そんな屈辱感ゆえの感情、なのだが。明らかにそれ以外の「私怨」も入っているように感じられる。
――やはり、大雅のRに対する反発心が、テイガートの威圧に拍車を掛けているらしい。
そんな思いがけない悪影響に頭を抱えつつ、酒場を出たRを、テイガートと同じ鎧を纏った少女が出迎えてくれた。
「あ、ど、どうも! 私、ネクサリー・ニーチェスという者です! この度はよろしくお願いしますっ!」
そこで、Rはハトが豆鉄砲を食らったような顔になる。
「……蟻田さん?」
……栗色のセミロングを揺らす、小柄な少女。間違いなく、蟻田利佐子の人相だ。
(蟻田さん……無事でよかった。ネクサリーの役ということは、そうそう彼女が殺されるような展開にはならないはず)
利佐子がネクサリーの人格を与えられていたことに、Rは不幸中の幸いだと胸をなで下ろす。
「DSO」のシナリオモードでは、ネクサリーは最終的に、マクセル達を連れてラスボスの魔獣から避難する役目を請け負う。エンディングまで生存していることが確定しているキャラだ。
仮に利佐子――ネクサリーがこの世界で死んだところで、現実の肉体に影響があるとは限らない。が、この状況そのものが異常である以上、何も起こらないとも考えにくい。
だからR自身も、ダイナグとノアラグンが信太と俊史であると知って以来、彼らを決して死なせない立ち回りを続けてきたのだ。
「オレは……ヒカル。短い間だが、よろしくな」
「はいっ! こちらこそよろしく……?」
これからも、それは変わらないだろう。Rは握手を求め、右手を差し出す。ネクサリーも、たどたどしい様子でそれに応じようとする――のだが。
「……?」
「どうした?」
「あの……私達、どこかで一度、お会いしましたか?」
小首を傾げ、不思議そうにそう問いかけて来た。そんな彼女の言葉に、Rは苦々しく目を背ける。
(……蟻田さん……)
――テイガートが大雅の人格に影響されていたように。ネクサリーもやはり、利佐子の影響を受けているようだ。
「DSO」本来のネクサリーにこんな台詞はないし、過去に主人公と面識があった、などという設定もない。
会ったことがあるだろう、オレだ、同じクラスだ。飛香Rだ。思い出してくれ。
――そう訴えたところで、今の彼女はまず理解しないだろう。利佐子の影響があるとはいえ、基本的な人格は「ネクサリー・ニーチェス」というNPC
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