第6話 一方的な再会
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突き出した。
一年は遊んで暮らせるような破格の金額に、周囲は喚声に包まれる。
「おいおい騎士団のあんちゃん! 誰を救出しようってのよ!? なんなら俺が一肌脱いでやってもいいんだぜ!?」
「てめぇのストリップなんざ誰も見たかねぇんだよ! それよりワシを雇ってみねぇか!? ワシぁこう見えても若い頃はそらもう……」
「歳食ったオヤジの出る幕はねーよ! それよりこの俺がだな!」
この場の賞金稼ぎ達はこぞって、依頼を受けようと騎士の男に猛然と迫る。
しかし、当の騎士は暑苦しい熱気に当てられても、一歩も引く気配がない。本来なら近付かれるのも嫌であるはずだが、そうも言っていられないほどに事態が切迫しているのだろう。
「救出対象は――ユリアヌ・リデル・イリアルダ様だ」
だが。騎士のその一言で、盛り上がっていた空気が一気に凍り付いてしまった。
その名前に、Rは他の連中とは違う事情で表情を強張らせる。
――ユリアヌ・リデル・イリアルダ。
この「DSO」シナリオモードのヒロインであり、物語を引っ掻き回すお転婆姫だ。彼女を救い、ラスボスを倒せば、晴れてシナリオモードはクリアを迎えられる。
……もっとも、それはRが知る「DSO」の話であり、この世界に当てはまるとは限らないのだが。
「マジかよ……イリアルダの格闘娘じゃねぇか」
「暴れ豚五十頭を素手でブチのめしたって噂のあの怪力女がさらわれるって……相手はどんなバケモンなんだよ」
「それはわからない。ただ、目撃情報を元手に追うことは容易だ。今必要なのは、戦力に他ならない」
淡々と現状を説明してみせる騎士だが、周りのならず者達は先ほどまでの威勢が嘘のように萎縮している。
ユリアヌ・リデル・イリアルダといえば、没落貴族イリアルダ家の令嬢にしてイリアルダ式格闘術の使い手だ。
その手腕は、慈悲なき冷酷な山賊さえ黙らせる程と言われている。
それほどな怪物を捕まえてしまうような、それ以上の怪物と戦え。
この依頼は――そう解釈して差し支えないのだ。
「はは、こいつはちょっとキツイぜ……」
「ど、どうもワシには向いとらんかった依頼みたいだのう」
賞金しか目に入らずにがっついていた連中は、頭を冷やしてその場から引き下がっていく。
そんな手の平返しを前にして、騎士の表情が険しくなる。頼みの綱の賞金稼ぎですらこれでは、いよいよ万事休すとなってしまうからだ。
だが、光明はある。それが「主人公」の役割なのだから。
「わかった。オレが行く」
周囲を一瞥し、立候補者がいないことを確認した上で、Rは名乗りを上げた。「DSO」では稀に、他の立候補者に随伴する形でこの依頼に応じるケースもあるのだが――どうやら今回は
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