第6話 一方的な再会
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の「キャスト」として、無意識下で己のキャラクターを演じさせられていた。
例えるなら、コスプレ大会といったところだが。彼らは「キャラクターを演じる」どころか、人格そのものを挿げ替えられているかのような、トランス状態に近い精神に変心していた。
Rと同じ、日本人の顔を持っていながら。Rと同じように、本来の人格を持った「人間」は、一人もいなかったのである。
(信太……俊史、みんな……)
友達なら、すぐそばにいる。それどころか、一緒に戦ってくれてもいる。しかし、それは鶴岡信太や真木俊史としての意思ではない。
あくまで、ダイナグとノアラグンという、ゲームによって設定された「プログラム」の範疇でしかない。
――近いようで遠く、賑やかなようで孤独。
そんなえもいわれぬ疎外感の中で生きる彼は、逡巡する。
いつまで、こんな日々が続くのか。現実の自分達はどうなっているのか。……いつになれば、自分達は帰れるのだろうか。
ふと、そんな弱気が脳裏をよぎろうとしていた、時だった。
「失礼する! 賞金稼ぎや用心棒が集まる酒場とは、ここで間違いないか!」
「……!?」
酒場一帯に響き渡る、甲高い男の声。
すると、それまで好き放題にどんちゃん騒ぎしていた連中は全員、目を丸くして声を上げた男に注目した。
何しろ、ここにいるような者達からすれば、あまりにもその声や、その主の格好は場違いなものだったからだ。
精巧に作られた鎧を見れば、高貴な出の人間であることは一目でわかる。
「王国の騎士……?」
一人がそうこぼした途端、一気に場がざわめいた。
「なんで騎士団がこんなところに!?」「まさか騎士団に入れなかった俺達の、今の仕事にまで難癖つけようってハラか!?」
ならず者達は、思い思いの疑惑を囁き合う。そんな彼らの喧騒を尻目に、突如現れた黒髪の騎士は、しきりに辺りを見渡していた。
「おいおいヒカル、とんだ客人だな」
ダイナグはうまく話題を逸らせたと思っているのか、調子のいいことをRに囁いている。
「な……!」
一方。Rは現れた騎士の人相に、暫し硬直していた。
――真殿大雅。彼はその美貌に相応しい鎧を纏い、イリアルダ家の騎士として「キャスティング」されていたのである。
(真殿君がテイガート……! ――なんだろう、こんな状況なのに妙に納得がいく)
「今日は諸君のいずれか一人に、救出任務の同行を依頼したく、参上した。騎士団が救援要請に応じない現状では、諸君が頼りになる。これが報酬金だ!」
簡潔に用件を述べると、大雅――が扮する騎士は、貴族のサインが付いた一枚の紙を広げ、ならず者達からよく見えるように
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