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Darkness spirits Online
第6話 一方的な再会
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で顔を覆いながら目を伏せていた。

 R達の後ろで殴り合いを始めている冒険者達。町を歩く一般人達。クエストの受付業務に励む、酒場の看板娘達。
 彼らは皆、この世界の住人として生きており、服装も与えられた「配役」に応じたものなのだが……服を除いた外見だけは、紛れも無い「日本人」であった。

 人の多い町に出たことで、より強くその歪さを実感し、Rは深くため息をつく。まるで大規模な仮装大会のようである――と。

「若い女をさらう誘拐犯に正義の鉄槌! ってな! いやぁ、イカすじゃねぇか俺達!」
「知るもんかよ。結局三人で賞金山分けって話だったのに、夜の飲み食いだけで使い切っちゃってさ」

 Rは目を細めて、隣のダイナグと、後ろのテーブル席で肉を貪っているノアラグンを言葉でチクリと刺す。
 ――自分の気も知らずにどんちゃん騒ぎに興じる親友達への、軽い意地悪であった。

「い、いやぁ〜、快勝快勝! ってハメを外しすぎちゃったみたいでなぁ!」
「そ、そうそうっ! そういうこともあるんだねっ!」

 Rの指摘に冷や汗をかき、乾いた声で笑う眼鏡を掛けた少年。
 そして――「ツンデレ」というものが好き過ぎるあまり、野太い声でありながら「勘違いしないでよねっ」の「ねっ」を語尾に付けたがる小太りの少年。

 賞金稼ぎ仲間の、ダイナグ・ローグマンとノアラグン・グローチア。彼らは日本人の容姿を持ちながら、ファンタジー感に溢れた衣装に身を包んでいる。

 黒い髪を少し長めに伸ばし、黒いジャケットを着込んでいる、貧民街に居座る賞金稼ぎにしては割りとオシャレなダイナグ。
 自力で仕留めた熊の皮で作った、肩の露出する服で身を包む、小太りのノアラグン。

 そんな彼らは眉をヒクヒクと動かしながら、Rの表情を伺う。

「……わかってるだろうが、金は出さないからな」
「そんなぁ〜っ! ひどいねっ!」
「つれないぞヒカルぅ!」
「やかましい! だいたいこないだのツケも払わないで、何を勝手なこと言ってんだよ!」

 いつもこうして、彼らは自分達が次の賞金首を見つけるまでの、生活費をねだろうとしてくる。

「……まったく……」

 Rはそんな彼らを煙たがりつつ……何処と無く、その眼に憂いを滲ませていた。

 ――この一週間。Rはこの「DSO」の世界の中で、数多のNPCと巡り合ってきた。クエストの受付嬢、賞金稼ぎギルドのマスター、同じ賞金稼ぎのライバル達。個性豊かな「キャラクター」達と、関わってきた。

 だが、その中に彼の記憶と合致する「容姿」の持ち主は、一人もいなかった。彼らは皆、日本人の外見を持っていたのである。
 イマドキの女子高生。頭皮が心配な中年男性。二十代後半のサラリーマンらしき青年。老若男女問わず、誰もがこの世界
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