第5話 電脳世界のマリオネット
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ル」の優雅な女性、コスモア・クレア・イリアルダは、心配そうな表情で夫である彼を見詰めた。
茶色の長髪と優美な純白のドレスが、彼女の持つ高貴さを浮き彫りにしている。
端正な顔立ちと白く透き通った肌、スレンダーな体つきに感じられる若々しさからは、年頃の娘の母親とは想像もつかないだろう。
「うむ、わかっておる。テイガートよ、頼みがある」
主に名前で呼ばれて、若い騎士はハッとして顔を上げる。
「は、はい! なんなりとお申しつけ下さい!」
自分に出来ることならなんだって、という徹底忠誠を示すテイガートの反応を前に、マクセルは意を決したように頷く。
そして、真剣な眼差しを臣下に向け、口を開いた。
「これからネクサリーと貧民街『スフィメラの町』まで行って、腕の立つ用心棒を雇ってきてほしい。経済的にも苦境な我が家だが、一人くらいならなんとか大丈夫なはずだ」
その言い付けに、テイガートは驚きのあまり、瞳を大きく見開いた。
「なんですって!」
「貧民街の用心棒を雇うなんて歴史ある貴族のすることではない、というのだろう? だが、我がイリアルダ家はどのみち没落貴族だ。今さらなにをためらうことがある」
「し、しかし!」
「貴族が、それもかつては優れた魔法を以って王国に仕えてきた、由緒正しきイリアルダ家が、そんな……!」
現実的な背景を鑑みて、可能な限りの手を尽くそうとするマクセルに、二人は反対の意を示す。
そしてそれを押し潰すように、彼らの主は語気を強めた。
「これは命令だ。テイガート、そしてネクサリーよ。騎士団に代わる勇敢な仲間を引き連れ、必ず娘を賊から救い出してくれ。騎士団が動かない今、お前達だけが頼りなのだ」
身体と心の芯から絞り出されたような、切実な訴えだった。
厳しいことはわかっている。貴族としてのプライドを自ら投げ出すことになるのもわかっている。
それでも、どうしても、娘を救いたい。
――貴族諸々抜きにして、一人の父として。
その重さを肌から感じ取ったテイガートは目を見張ると反発を止め、片膝をついて騎士としての誓いを立てる。
「……わかりました。このテイガート・デュネイオン、命を賭してユリアヌ・リデル・イリアルダ様を救出してご覧にいれます」
「わ、私、ネクサリー・ニーチェスも、最善をつ、尽くします!」
少々噛みつつ、ネクサリーも彼に続いて決意を表明した。
「二人とも……ありがとう。お前達こそ、真の騎士だ」
「ええ、私達が証人になるわ」
若き騎士達の誠意に、貴族夫妻はありのままの気持ちを言葉に、二人を称えるのだった。
◇
――イリアルダ邸の中で交わされる、君主と騎士の絆。プレイヤーが知り得ない舞台裏では、
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