第5話 電脳世界のマリオネット
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まりの物言いに耐え兼ねたのか、若い騎士は腰にした剣に手を伸ばす。
その動きを見ていた門番はため息交じりに、少し離れた所で警備の仕事をしていた同僚を呼ぶ。
「おい、くせ者だ!」
その声に反応した彼の同僚は水を得た魚のように活発に動き出し、
「ぐっ――!?」
仲間達を集めたかと思うと、あっという間に若い騎士を槍で取り囲んでしまった。
「ひ、卑怯な!」
「騎士団長ならわかってくださるはずです、会って話をさせてください!」
大勢に槍を向けられて動けなくなった彼に代わり、少女の方が声を上げる。
しかし、門番は全く意に介さない様子で彼女を見下ろす。
「何度も言わせるな。騎士団長殿に貴様らと関わっていられる暇はない。手紙とやらを読むヒマもな」
「そんな――まさか、握り潰したというのですか!?」
「握り潰すとは人聞きの悪い。政治的にも軍事的にもマイナスにしかならない、切り捨てなければならない、些細なことだと上が判断したのだ」
「貴様ッ! なんという下劣な――ッ!」
若い騎士は怒りに任せて剣を引き抜こうとするが、喉元まで伸びてきた槍の切っ先がそれを許さなかった。
「く……ううッ! 卑怯者どもが……!」
「ユリアヌ様、お許しください……」
これ以上迂闊に動けば、本当にこの場で粛清されかねない――それほどの殺気がその槍から放たれていた。
「話は終わりだ。お引き取り願おう」
その一言を受けて、若い男と少女の騎士達、テイガート・デュネイオンとネクサリー・ニーチェスの二人は、やむなく踵を返したのだった。
◇
「そうか……騎士団の救援は、無理だったのか」
助けを得られなかったばかりか、くせ者扱いされて槍まで向けられた自分達の無力さを痛感し、絶望的な表情で俯いていた二人の眼前で、一人の男性が呟く。
かつての名門・イリアルダ家の当主であるマクセル・バルド・イリアルダは、苦悶の表情で部下達を見遣った。
「恰幅のいい体格」と、「禿げ上がった頭皮」が特徴の彼が呟く言葉は、重々しい現実をあるがままに表していた。
彼が座る玉座の前に、二人の騎士がひざまづく。
「申し訳ありません! 私達がもっと強く申し出ていればきっと……!」
「いや、私の手紙が握り潰されてしまう時点で、騎士団の力に頼ることはもはや絶望的であろう。だが、テイガートもネクサリーも、よくやってくれた」
「そ、そんな! 私達、頑張っても全然お役に立てなくて……」
少女である以上に騎士でもあるネクサリーは、どうしようもなく申し訳なさそうな顔で、自分達の主を見上げる。
「でもあなた、このままじゃユリアヌは……」
マクセルの隣に腰掛けている「茶色がかったポニーテー
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