第4話 操り人形達の箱庭
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」
しかし。
Rは、すぐにはそれを受け入れることが、出来なかった。
確かに、台詞はダイナグとノアラグンのものだが。自分がよく知る、荒くれ者のキャラクターの台詞だが。
アメリカでしか発売されなかったゲームでありながら。その発音は、日本語であり。
「信太……!? 俊史……!?」
――彼らの外見は。Rがよく知る、日本の友人のものだったのである。
ダイナグの格好をした、鶴岡信太。ノアラグンの格好をした、真木俊史。彼らは、NPCとして。
この「DSO」の世界に、生を受けていたのである。
『まさか「DSO」の元プレイヤーが紛れていた上、その人物がよりにもよって「主役」とは。運命とは、不思議なものです』
『基本的には「DSO」のシナリオモードそのものですよ……あなたがご存知のように。ただ、「配役」と「展開」に多少のアレンジは入っていますが』
やがてRの脳裏に、あの老紳士が残した言葉が蘇る。それは、この世界の歪さを端的に語っている言葉だったのだ。
(「主役」って……「配役」って……! まさか、こんなッ……!)
その悍ましさを理解した瞬間。全身が総毛立ち、剣を握る手が小刻みに震える。そして――突き上げるような憤怒の渦が、Rの眉を吊り上げた。
(……こんな風に。「主役」のオレ以外の人間全てを操り、NPCを演らせているっていうのか! なんなんだ……この世界はッ!)
その怒りが、剣に乗る瞬間。Rの隙を狙おうと飛びかかってきたゴブリンが、無惨に斬り裂かれた。
――振り向きざまに放った横一閃。その剣の閃きが、ゴブリンの身体を上下に切り分けたのだ。
『心配せずとも、ゲームをクリアすればあなた達は帰れますよ。このゲームをやり尽くしているであろうあなたなら、容易いことでしょう?』
「……そうさ。オレは、必ずこのゲームをクリアする。誰一人として……死なせてたまるかッ!」
例え、そう思わせる罠だとしても。今はただ、迸る怒りを鎮めるために。
Rは激情の赴くまま、行く手を阻むゴブリン達に、鉄の剣を叩きつけるのだった。
――その影で。老紳士が嗤っていることも、知らずに……。
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