第4話 操り人形達の箱庭
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とにかくここに居座っても状況が動かないのは間違いなさそうだからだ。
――少なくとも、これはオフラインのシナリオモード。なら、主人公である自分がアクションを起こさなくては、フラグも発生せず、何も進まない。
それならば、まずはこのままゲームを進めるしかないだろう。いずれ、あの老紳士の言葉の意味にたどり着くと、信じて。
(名誉、勇気、献身……海兵隊の言葉、か……?)
――老紳士が残した言葉を、心の片隅にしまいながら。
◇
――シナリオモードの舞台である「ベムーラ島」。治安の悪さで知られるその島には、賞金稼ぎが集う「スフィメラの町」がある。
そこが資金や経験値集めの拠点であり、その町に辿り着いてから、本格的にゲームが始まる流れとなっている。
そこへ向かうには、森を抜けて町へ続く平原の一本道を通ればいい。迷うような道ではないし、出てくるモンスターも初期装備で十分に対応できるレベルだ。
しかし。森を抜ける、という段階において。
この後の展開を分ける、「分岐イベント」が存在している。
森を抜ける直前で、モンスターと初戦闘となるわけだが。ほぼ同時に少し離れた林の中で、二人組の賞金稼ぎがモンスターに襲われるイベントが発生するのだ。
その賞金稼ぎ達は滞納している飲み食い代の返済の為、空腹を押して討伐クエストに挑んでいるという無茶をしており、本来の力を発揮できずピンチに陥っている。
強制ではないので、初戦闘の後に二人を見捨てて森を抜けても、シナリオの進行に支障はない。
実際、初見プレイヤーは大抵、一周目では彼らを放置して町に向かっている。賞金稼ぎ達を襲っているモンスターの数が、シャレにならないからだ。
能力が低いNPC二人を守りながら、大量のモンスターをほぼ独力で殲滅しなくてはならないため、シナリオモードの全イベント中でも屈指の難易度を誇っているのである。
だが救出に成功すれば、二人組の賞金稼ぎ達は主人公の仲間として常時随行するようになり、それ以降の戦闘は大幅に楽になる。
なので二周目以降の腕を磨いたプレイヤー達は、軒並みこのイベントに挑戦し、二人を救い出しているのだ。縛りプレイのために敢えて見捨てるケースもあるらしいが。
(最後まで付き合ってくれる、NPCの仲間……か)
――森の出口付近で待ち構える、棍棒を掲げた数体のゴブリン。その「余りにリアル過ぎる」醜悪なモンスター達と対峙しつつ、Rは出口とは異なる方向に視線を向けていた。
その方向からは、「イベント発生」を告げるゴブリンの大群の雄叫びが響いている。
(……何の変哲もない「DSO」のシナリオモードなら、オレ独りでもどうにかなると言いたいところだが。ここはオレが知っている「DSO」じゃないんだ。
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