第3話 禁じられた世界
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つAIを搭載するNPCが数多く登場し、当時は大きくニュースでも取り上げられていた一作である。
(この痛み……間違いない)
その最大の特徴は、他のゲームにはない「リアリティ・ペインシステム」。プレイヤーの五感に、現実と遜色ない「痛覚」を齎し、死と隣り合わせの戦いを体感できるという機能だった。
この機能により、ゲームと現実はプレイヤーの意識下で一体となり――正しく生死を分ける死闘を、「リアル」に体験できるようになったのである。
その画期的な機能により、DSOはVRMMOの頂点に立つ――はずだった。
しかし、そのリアリティを追求し過ぎた機能は、人間の精神に異常を来す悲劇へと繋がったのである。
――あまりにもリアル過ぎるDSOにより、現実とゲームの区別がつかなくなってしまったプレイヤーが続出したのだ。
リアリティ・ペインシステムに狂わされたプレイヤー達が、現実世界で凶行に走るケースが頻発したのである。DSOの影響によるものと判断された殺人事件の件数は、数百に及ぶと言われている。
結果、DSOは発売から僅か2ヶ月で発禁となり、全てのソフトがアーヴィングコーポレーションに回収された。オンライン対戦が基本であるゲームでありながら、その公式大会も一度しか開かれなかった。
……それが、2年前の事件。
以来、全てのVRMMOから「痛覚」の概念が消え去り、ゲームは「極限のリアリティ」を代償に、万人が求める「安全」を取り戻した。
だから、もうこの世には――少なくとも一般の手が届くところには、もう「DSO」は存在していないはずなのだ。
しかし現に自分は、その「DSO」の世界にいる。
当時、ただ一度だけ開かれた公式大会に参加し、優勝をもぎ取ったプロゲーマー……飛香Rは。
確かに、「DSO」の世界へと招かれているのだ。
(……ここは、本当に「DSO」の世界なのか? だったら……)
ここは本当に「DSO」の世界なのか。それとも、それによく似た、本当の異世界なのか。
途方もない疑問を、一つ一つ解き明かすべく。Rは指先を空間の中で滑らせる。
――すると。VRMMOならではの、立体ステータスバーが表示された。
(ステータスが出て来た! ということは、ここはやはり「DSO」の……!? いや、違う!)
このような現象、ゲーム世界でなければありえない。だが、すでにRが知っている「DSO」とは違う部分が見受けられていた。
ログアウトの選択肢が、なかったのである。
(ということは、ここはただの「DSO」ではない、ということなのか。しかし、一体なぜ、なんのために……!?)
少なくとも、今すぐこの世界から出ることはできないようだ。
――林間
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