第2話 運命の始まり
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
何が起きたのか。まさか、何かのトラブルか。
その推測から、Rは車内がパニックに陥る可能性を考え、咄嗟に口元を覆い隠しながら辺りを見渡す。
(……!)
だが。すでに辺りは静寂に包まれ――つい先程まで、旅先に思いを馳せて談笑していたクラスメート達は、その意識を刈り取られ力無く倒れていた。
引率の先生も。そして……自分の帰りを待っていた、優璃達までも。
(伊犂江さん、みんな!)
ぐったりしたまま動かない優璃の手には、Rの荷物が握られている。彼の分の荷物も、纏めようとしていたのだろう。
そんな彼女に手を伸ばすRも、力が抜けたかのように片膝をついてしまった。うまく、足が動かない。
(ガス、なのか……!? 一体、何が、どうなって……!)
詳しい状況はまるで見えてこないが、この車内にいる全員が意識を失っている以上、とてつもない異常事態が発生していることは間違いない。
すでに新幹線は目的の駅に到達し、停車しているが――運転手は無事だろうか。
(あの人、は……!?)
次第に薄れていく意識の中。Rは、先程すれ違った青年のことが気掛かりになり、振り返ろうとする。
だが……すでに彼の体は、指先一つ動かせなくなっていた。
このまま、死ぬのか。わけもわからないまま、その運命を予感した少年は。
(……ソフィ、ア……)
――ある少女の名を、心の奥底で呟き。己の意識を、闇の中へと手放した。
『散布、完了。全ての準備が整いました』
『よろしい。では、私達は暫し身を隠すとしましょうか。……さぁ皆さん。待ちに待った瞬間ですよ』
『おぉ……いよいよ我らも、この下らない世界からの解脱を果たすのですね』
『えぇ、そうです。脆弱で窮屈な、この身を捨てて……今こそ旅立とうではありませんか。悠久の、仮想世界へ』
倒れた自分のそばを歩く、男達の足音にも。彼らが交わす、怪しい言葉にも。
頭に「何か」を被せられたことにも、気づかずに。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ