第2話 運命の始まり
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それに釣られるように利佐子もクスクスと笑みをこぼす。
一方。優璃や利佐子がRに対して好意的である理由を聞かされてからも、大雅はどこか納得しきれず、渋い表情を浮かべていた。
「……そんなの。誰だって出来ることじゃないか」
「うん、そうだね。……でも、本当にそれをやってくれたのは飛香君だった。私には、それで十分なんだよ」
「……」
だが、優璃の言葉を受け。釣り上がっていた彼の眉が、僅かに緩む。
(……確かに、後からなら何とでも言える……か。少なくとも、飛香Rがそれほど誠意を持って花を労わっていたのは、事実なのかも知れんな)
なぜRが、それほどまでに花を大切にしているのかはわからない。だが、少なくともそのひた向きさが、優璃の心を動かしたのだろう。
――Rのことを語る彼女の眼は、全ての疑念を掻き消すほどの真っ直ぐさを持っていた。
「……あとで、詳しく聞き出してやるとするか。伊犂江さんを誑かした、手口をな」
「……くすっ」
それゆえに、少しだけ――信じてみようという気持ちが働いたのか。大雅は憮然とした表情で腕を組み、Rが向かった方へ目を向ける。
そんな彼の意固地な横顔に、利佐子は困ったような笑みを浮かべるのだった。
◇
やがて、新幹線が減速していき――到着の瞬間が近づく頃。
Rはトイレからの帰り道である通路を、早足で直進していた。
(やばやば、みんなもう荷物まとめ出してるよ……急がなきゃ)
辺りのクラスメート達も、他所のクラスも、到着が近いこともあって荷物を纏め始めている。その光景に急かされながら、そそくさと自分の席を目指していたRは――向かいからやって来た他の一般客とぶつかってしまう。
「いたっ! す、すみませ……!?」
そして。頭一つ分以上の体格を持つ、黒ずくめの姿に息を飲むのだった。さらにブラウンに近しい髪と、鋭く蒼い瞳は、獲物を射抜くような鋭い光を放っている。
オールバックに整えられたブラウンの髪を持ち、漆黒のトレンチコートに身を包むその青年は――暫しの間、立ち止まってRの目を正視していた。そんな彼の眼差しと向き合うRは、彼のえもいわれぬ威圧感に肝を冷やす。
(……!? この人は……?)
――しかし。Rはそれだけではない何かを、この青年に感じていた。どこかで見たことがあるような、ないような。
奇妙な既視感を、覚えていたのだ。
「……」
「あっ……」
だが。青年は僅かな間、Rを見つめた後――興味を失ったように、無言のままRの傍らを通り過ぎていく。
謝罪の言葉を言いそびれたRは、咄嗟に引き止めようと口を開いた。
だが。
その瞬間。
「え――」
Rの視界が、突如「煙」のような靄に包まれる。
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