第2話 運命の始まり
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宗生やクラスメート達を見遣るだけで何も語らない。
そのまま優璃とRが別れ、彼女達が席に着いた時。クラスメート達はなんとか見逃して貰えたのだと、胸を撫で下ろすのだった。
「全く……かっこ悪い人達なんですから」
「かっこ悪い?」
「いえ、なんでも」
そんな彼らに、利佐子はため息をつく。珍しく気疲れの色が窺える幼馴染の姿に、優璃は小首を傾げるのだが――利佐子は何も語らず、朗らかな笑みを浮かべるのだった。
その眩しい笑顔には、信太や俊史もすっかり魅了されている。
「しかし、伊犂江さんはなぜあんな奴にこだわるんだ。確かに成績は優秀だし、学校での素行に致命的な問題があるわけじゃない。だが、あいつはバーチャルで女の子を弄ぶ陰湿なオタクなんだぞ」
一方。トイレに向かって立ち去っていくRの後ろ姿を見やりながら、大雅は腑に落ちない表情を浮かべていた。
相変わらずな言い草に、利佐子は再びため息をつくが……優璃は穏やかに笑いながら、彼に向けて口を開く。
「……確かに、趣味はちょっと変わってるかも知れない。でも、あの人はそんなことどうでもいいくらい、大切なものを持ってるんだよ」
「なに……?」
諭すような口調に、大雅の眉が釣り上がる。あの飛香Rに何があるというのか。好奇心と反発心が入り混じった、複雑な表情を浮かべる彼は、優璃の言葉に耳を傾ける。
――やがて彼女の口から、Rが美化委員としてどれほど花々に尽くして来たかが語られた。
直接の接点はなかったものの、優璃と利佐子は中学三年の時からRと同じクラスであり……その頃から彼は美化委員として、常に花壇に咲く花々を世話していたのだという。
暑い日も、寒い日も。季節の移り変わりの中、手塩にかけて育てた花が枯れても。彼は手を土に汚しながら、花壇で無数に咲く花の一つ一つを、一日でも長く咲き続けられるよう育て続けていた。
それは傍目に見ればとても地味なことだし、さして特別なことでもない。やろうと思えば、誰にだって出来ることだろう。
しかし、実際にそれをやり抜いたのは、飛香Rだった。年中校舎の花を労わり、その咲き誇る姿に愛情を注ぐ。それを実践していたのは、Rだけだったのである。
花を好む優璃にとって――土に濡れながら、花壇の手入れを続けるRの姿は。周りの女子が囃し立てているようなスポーツ男子達よりも、輝いて見えたのだという。
「私も……お嬢様を笑顔にしてくださる彼には、心底感謝しているのです。そんな殿方と、仲睦まじく過ごしたいと思うのは不自然でしょうか?」
「多分、みんなにはわからないのかも知れないけど。飛香君は、本当に強くて優しいところを持ってるんだ。……ちょっと、かっこいいところもね」
一通り語り終えると、優璃ははにかむように笑い、
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