第2話 運命の始まり
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彼らを乗せた新幹線は、ようやく目的地の自然公園に辿り着こうとしていた。
自然に溢れた観光名所も多い場所での、楽しい日々がこれから始まる――はずなのだが、Rの表情はどうにも優れない。
「あれ? 飛香君、顔色良くないけど、大丈夫?」
「酔ったのですか?」
「い、いやぁ、別に。……もうそろそろ到着みたいだし、ちょっとトイレ済ませてくるよ」
「あ、うん。いってらっしゃい」
どうにか居た堪れない空気から逃れようと、Rは理由をつけて席を立つ。鼻を鳴らす大雅のジト目に睨まれながら、彼はそそくさとトイレに移動し始めた。
(いつまでもこんな風に全方位から睨まれるのかと思うと、本当に体調崩しそうだよ……大丈夫かなぁ、オレ)
そして、先行きの不安に腹を痛めつつ、トイレを目指して通路を直進していく。――その進路上に、宗生の足が入ってきたのは、その直後だった。
「……!」
タイミングはやや遅い。普通に跨いでかわすこともできる。
――だが宗生の性格上、避けたら避けたで余計に怒らせてしまうだろう。
Rは一瞬に満たない時の中で、そう判断し……彼をはじめとするクラスメート達の溜飲を下げるため、敢えて引っかかることを選んだ。
「あいたっ!」
「ぎゃははは! おいおい何やってんだ飛香ぁ! こんなとこで転んでんじゃねーよ!」
差し込まれた宗生の足に躓き、すっ転ぶR。そんな彼の醜態に気を良くしたのか、宗生はゲラゲラと笑い声をあげる。
位置的に彼が足を引っ掛けた瞬間が見えていた者も多いのだが、彼を糾弾する者はおらず、誰もが転んだRを笑っていた。
「ちょっと飛香君、大丈夫!?」
「あ、あはは……ごめんごめん、何でもないよ」
「擦りむいては……いないようですね、よかった……。気をつけてくださいね、飛香さん」
「うん、ありがとう」
だが、学園のアイドル達はそれを良しとせず。優璃と利佐子はすぐさまRのそばに駆け寄ると、甲斐甲斐しく彼を助け起すのだった。
彼女達の席からは、宗生の行為は見えないはずだが――なんとなく経緯を察したのか、利佐子は宗生の方をじろりと見遣る。それに肝を冷やした彼は、笑い声を止めると窓の外に視線を移すのだった。
その様を目の当たりにして、クラスメート達も笑いを止め、バツが悪そうに視線を外した。宗生のやったことがバレたら、Rを笑っていた自分達まで、絶対的な人望を持つ「学園のアイドル」に睨まれる――という展開を恐れたのだ。
優璃の方は何も気づいていないようだが、利佐子が告げ口をするかも知れない。その可能性もあった。
「もう大丈夫。ごめん、心配かけて」
「ううん。じゃあ、早く帰って来てね」
だが、利佐子は空気が悪くならないようにしているのか、目を細めて
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