第2話 運命の始まり
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「……でね! エーデルエリアっていうところがもう、ほんとにすごいの! 楽園っていうイメージがぴったりの花畑が、いっぱいに広がってるんだよ!」
「私もお嬢様も、もう何時間も入り浸っちゃいまして!」
「へ、へぇ……」
――胃の痛む数日を経て迎えた、林間学校当日。R達六人班は、行きの新幹線に乗り東京から出発していた。
窓から伺える豊かな自然風景。その美しさを眺めながら、旅先へと思いを馳せる至福のひととき……であるはずの旅路は、針のむしろのような生き地獄となっている。
『安心で快適な暮らしを。伊犂江グループ』
『今話題の最新VRゲーム情報を、多数収録! 週刊アーヴィング、毎週水曜日発売!』
『ハリウッド女優、エリザベス・エッシェンバッハも絶賛! 硝煙と銃弾が彩る、最凶の戦場……! VRFPSの最高峰、「Raging Army Online」好評発売中!』
車内に備え付けられているTVは景気のいいCMを流してばかりで、気休めにもならない。
「Happy Hope Online」――通称「ハピホプ」の話題で盛り上がる優璃と利佐子に付き合いながら、周囲の視線に怯えるRは、キリキリと痛む胃を抑えながら作り笑いを続けていた。
キモオタ三人組……とりわけRに対する周囲の眼光は凄まじく、学園の二大アイドルを独占(?)している彼への睨みは、さらにその鋭さを増している。
◇
その渦中にいるR達の班を、遠巻きに見つめる男女が二人。
「い、いやぁ、彼らはいつも注目の的ですなぁ、春野先生。ウチのクラスの男子共も、彼ら……とりわけ伊犂江さんにはご執心でして」
「まぁ、彼女の身の上を鑑みれば、目立つのも仕方のないことでしょう。……それより冬馬先生。ここの車両は私のクラスなのですが」
灰色のスーツに身を包む、二十代後半に差し掛かる美女。茶色がかった髪をポニーテールに纏めた彼女は――R達のクラスを担当する女教師、春野睦都実。その美貌と冷静沈着な人柄から、男子生徒や教師陣から人気を集めている人物である。
その寡黙な佇まいや切れ目の眼差しゆえ、クールな印象を受けることが多い彼女であるが……生徒達に対しては真摯な姿勢の持ち主であり、成績優秀でありながら正当に評価されることが少ないRに理解を示す、数少ない人物でもある。
「しかし、あの飛香とかいう生徒は、どうやって伊犂江さんに取り入ったんでしょうなぁ。歪んだ性癖のオタクの癖して」
「彼は趣味こそ些か特殊ではありますが、それは他者に迷惑をかけるものではありません。加えて、授業に対する姿勢や成績も良好。私としては――あなた方のような見識を持つ人間が、教鞭を振るっていることの方が不思議でなりません」
「そ、それはその……」
――そんな彼女だからこそ、
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