第1話 学園のアイドル
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「学園の聖女」。「学園の天使」。この五野高の人気を二分する二人の美少女が、両方揃って一つの班に集まっている。
それだけでも嫉妬の爆炎が噴き上がることは必至だというのに――その班が、よりによってキモオタ三人組という事実。
そこから導かれていく男子達の嫉妬の火柱は、天を衝くかの如く突き上げられていた。
「ふざけんな……ふざけんなよ……! あんのキモオタどもが……!」
「伊犂江さんだけじゃ飽き足らず、蟻田さんまで……!? さてはあいつら、何か伊犂江さん達の弱みを握って……!」
「そうだ、そうに決まってる!」
「あいつら、サイッテー……! 女の敵よ! 敵だ!」
そこまで嫉妬がヒートアップしてしまっては、単なる憶測すらも(彼らの中で)真実味を帯びてしまう。かくしてR達三人組は、クラスメート全体から謂れのない憎しみを買う羽目になるのであった。
「……ッ! 飛香R! お前一体、この子達に何をしたんだ!」
「い、いやオレは何も……」
「この子達の弱みを握って言いなりにさせようってところなんだろうが……そうはさせないぞ。確か、班は六人までだったな。なら、俺が入る!」
「えぇ!?」
さらに事態は急転していく。大雅までもが、R達の班に入ると言い出したのだ。そのことで女子の怒りまでもが噴き上がり、教室の隅に集まった三人組は四面楚歌のような状況に陥ってしまう。
「お前達三人組……特に飛香R! お前の好きには絶対にさせない。この林間学校でお前の悪事を暴いて、彼女達を救ってみせる!」
彼の脳内では、R達三人組は完全に悪者になっているようだ。勇者さながらに勇ましい宣言と共に、大雅はこの班に組み込まれることになってしまう。
「え、えーと……まぁ、せっかく組むんだったら仲良くやろう? 真殿君?」
「ああ。伊犂江さん、俺がこの班にいるからには、もう安心だ。必ず、君を守るよ」
「もー……わかってませんね、この人。あ、もうそろそろ昼休み終わりですね。じゃあ飛香さん、またあとで!」
そして怒涛の展開の果てに、チャイムが鳴り。優璃と利佐子と大雅の三人は元の席へと帰っていく。
思わぬ展開であっけにとられていた二人は、やがて我に帰ると自分達に集まる強烈な憎しみの眼に、身震いするのだった。
「ど、どうしよ……」
「えらいことに、なったんだねっ……」
そんな友人達を横目で見やりながら。自分を睨む大雅と、笑顔で手を振る優璃と利佐子を、交互に見つめるRは。
(あぁ……どうしよう。絶対穏やかに終われない……)
この先の不安に頭を抱えながら、林間学校当日を迎えることになるのであった。
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