第1話 学園のアイドル
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揺れる。
クラス――否、学園のアイドルとしてその名誉を独占する彼女の存在には、教室にいる誰もが注目している。
それゆえに、男子生徒達は三人組に怒りの視線を注ぎ……女子生徒達もまた、侮蔑の眼差しを送っていた。三人組がそれらの視線に当てられ萎縮する中、当のアイドルはまるで気づいていないようであるが。
――深窓の姫君を彷彿させる純白の柔肌。16歳という年齢には不相応な、豊満たるバスト。妖艶なまでに滑らかな曲線を描く肢体。
目鼻立ちは美術館の彫刻に勝る整然とした並びであり、その薄い桜色の唇からはえもいわれぬ色香が漂っている。
さらに窓から吹き込む風に揺れ、ふわりと舞う漆黒のボブカットは、絹のように艶やかだ。
彼女の名は、伊犂江優璃。アーヴィングコーポレーション日本支社のスポンサーであり、日本を代表する一大企業でもある「伊犂江グループ」の令嬢である。
さらに成績優秀、品行方正。それに加え、人当たりも良く教師陣からも信頼されている人物でもあり、運動だけは苦手という可愛らしさもあって、男子生徒からは絶大な人気を得ている。
噂によれば、「学園の聖女」という異名まで付けられており、校内のファンクラブの会員数は二百名に及んでいるという。他校からも注目されるほどの美貌であることを鑑みるなら、ほぼ真実である可能性が高い。
それほどの絶対的美貌と人気を持つ彼女は、これまで数多の男子から交際を申し込まれてきたのだが――その都度、丁重に御断りし続けており、彼女と付き合えた男性は一人としていないと言われている。
親しみやすい人柄ではあるが、深い仲には誰も踏み込めない、絶対不可侵の高嶺の華。それが、伊犂江優璃という少女なのだ。
――その彼女が、男子に自ら声を掛けに行っている。しかもその相手は、いわゆる「キモオタ」のレッテルを貼られている三人組の男子達。
そんな状況を目の当たりにすれば、周りの男子が「なんであんなキモオタ三人衆に伊犂江さんが!」と憤るのも必然なのだろう。そればかりか女子までもが、「伊犂江さんを穢す豚ども」と言いたげな眼光で三人組を射抜いていた。
そんな殺気を浴びせられ、教室の隅で寄り集まっていた三人組はさらに萎縮してしまっていた。
眼鏡を掛けた、細身の少年「鶴岡信太」。美少女キャラをプリントしたシャツを着ている、小太りの少年「真木俊史」。
そして、艶やかな黒髪と中性的な顔立ちを持つ少年「飛香R」の三人は、揃ってゲンナリした様子で優璃を見上げている。
(ま、また伊犂江さんがこっちに来てるんだねっ……いい加減、周りに睨まれるのは勘弁して欲しいんだねっ)
本人に聞こえないよう、俊史は小声で二人に訴える。
ツンデレ
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