紅殻勇者グランタロト
第0話 おとぎ話と罪の始まり
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「う、ぅ……ぁあ、あ……」
ウェーブのかかった、ブロンドのセミロング。
艶やかなその髪を撫で、動かなくなった彼女を抱く少年は、嗚咽を漏らし、荒れ果てた部屋の中にその声を響かせる。踏み荒らされた花々が、彼の荒んだ胸中を物語っているかのようだ。
少女の身体は、まだ暖かい。ほんの数分前までは、息をしていたのだろう。まるで、生きているかのような温もりだった。
「ソフィア……! ごめん、ごめん……!」
もう決して届くことはない。そうと知りながら、少年は啜り泣くように少女へ謝罪する。彼女はそれに対し、怒ることも悲しむこともなく、ただ静かに眠り続けていた。
少女の額から伝う紅い雫が、少年の腕を伝い床へと滴り落ちていく。彼の嗚咽が止まった時、この場に響くのはその水音のみとなるのだろう。
微かなその音を掻き消す少年の慟哭だけが、今はこの部屋に轟いている。声が枯れるほどに泣き叫んだとしても、全ては出遅れだというのに。
「……オレは、こんな……こんなことのためじゃあ……!」
黒髪を振り乱し、少年は懺悔する。だが、もう遅い。
何よりも守りたかった人を、死に追いやった彼にはもう、現実に目を背ける資格すらなかった。
――彼は。彼女の、全てを奪ってしまったのだから。
「夢の世界」での、「殺戮」の果てに。
◇
――少女の葬儀に参列した遺族は、多いものとは言えなかった。
元々病弱で友人も少なく、親族からも疎まれていた彼女には「味方」すらいなかったのである。
草原の中に広がる墓地の中で、喪に服し少女に花を捧ぐ。その葬いの中で、少年は光を失った瞳で――愛した彼女の、寝顔を見下ろしていた。
白く穢れのない、百合の花。生前の彼女が愛した、その花々が今、棺の中に眠る彼女を華やかに彩っている。彼女の骸が向かう先には、「Sophia Parnell」の名を刻む墓標が建てられていた。
「……別れは、済ませたかい」
少年の傍に、老境の神父が寄り添う。優しげに頬を緩め、少年の頭を抱き寄せる彼は、愛おしげに少女を見つめていた。
「……私は、昔からこの子のことをよく知っていてね。友達が欲しい、友達が欲しいと、小さな頃から神様に願い続けていたのを覚えているよ」
「……」
「この子にとって、君は天使だったのだろうね。自分を愛してくれる、たった1人の男の子。そんな子を、好きにならないはずがない」
唇を噛み締め、肩を震わせる黒髪の少年。神父はそんな彼の頬を、静かに撫でながら――幼子をあやすように語り掛ける。
「私も、君のことを愛しているよ。この子の希望になってくれた、君をね。だから私は、君自身にも君のことを愛してあげて欲しい」
「……オレは、ソフィアを殺したんです。神父様
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