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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
コラボ
〜Cross over〜
Escalation;激化
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ない。ただ置いただけのような単発の突き蹴り、と相手には見えたことだろう。

実際、眼前の少年は鼻白んだような表情をかすかに浮かべ――――次の瞬間、必殺技の技名発声を感知したシステムが発生させた、凛冽なヴァイオレットブルーの輝きに顔色を変えた。

今度こそ本気のバックダッシュ。

歩くや走る、というよりその動作は滑る、に近い。移動系の常時発動(パッシブ)アビリティを持っているのか、それとも靴が特殊な能力を持っているのかは不明だ。しかし、その滑らかさは半端ではなく、空気抵抗も摩擦力も一切合切無視した勢いで強引に両者間の距離を見る間に開けていく。

―――私と同じ、ホバー移動の類か?だが……甘いッ!

左足の膝から先が必殺技の燐光に包まれる。

次の瞬間、強烈な光を宿していた脚部が消えた。いや、正確に言えば消えたのではない。霞みながら無数に分裂したのだ朧な剣の先端だけが円錐状に撃ち出す様は、言うなれば刃を打ち出すショットガンか。

ブラック・ロータスのレベル4必殺技《宣告・連撃による死(デス・バイ・バラージング)》は、左右いずれかの脚剣による横蹴りを秒間百発×三秒間繰り出す技である。この手数はロータスの持つ必殺技の中でも群を抜いており、レベル5必殺技《宣告・貫通による死(デス・バイ・ピアーシング)》やレベル8必殺技《宣告・抱擁による死(デス・バイ・エンブレイシング)》のような一撃必殺を旨とした技より、その広い効果範囲と弾幕で相手を追い詰めることを目的とする。

だが、斬撃ではなく部類(カテゴリー)上は刺突にあたるので、部位欠損のような派手なダメージは期待できない。しかし、先のファーストアタックを超えるダメージは必ず叩き出すはずだ。

そのはずだった。

今回も黒雪姫の予想は大きく覆されることとなる。

円錐状の弾幕の底部――――つまりは第一の弾幕が後退する紅衣の少年の細い胴に突き刺さろうという時。

パァン!!と大き目の爆竹のような音とともに、対戦相手の姿が綺麗に掻き消えたのだ。

「な…………」

目標を失った必殺技は、宙空に虚しい残光を引き、やがて減衰していく。既定の必殺技ゲージを消費し切り、技を終了させたのだ。だが、鮮烈な青紫の残滓を視野に引きずりながら、黒雪姫は鋭く目線を翻す。

―――瞬間移動、だと!?とくに技名発声をしている様子はなかったが……。

対戦中に相手の現在位置が分からないというのは中々に怖い。焦りも後押しし、V字のバイザーを振り回す黒雪姫の頭上から、

「メ?膓メ???」

意味不明ながらも、腹が立つほどの平静さを孕んでいる程度は分かる声が降ってきた。

素早く見上げると、梅郷中の校舎。《月光》ステージの影響で白亜の神殿じみた姿に変じているその壁面に据えられた
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