第二十五話 最後の修行その七
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「そして試しているのは誰か」
「陰陽師ですね」
譲二はすぐにだ、英雄に答えた。
「やはり」
「そうだな」
「普通の龍ならです」
「こうして襲っては来ない」
「そうだな」
正も頷く。
「龍はな」
「龍は川を護りはしますが」
「橋を渡る位ではな」
「襲い掛かってはきません、しかも」
「倒してすぐに消えるか」
「そんな筈がありません」
普通の龍ならというのだ。
「生きているのですから」
「霧みたいに消えるか」
「有り得ない」
それは絶対にというのだ。
「そんなことはな」
「そうです、しかも銀に変わることもありませんでした」
倒してもというのだ、街の外の魔物達の様に。
「ですから」
「どう考えてもな」
「陰陽師が出したものです」
「そしてその陰陽師は」
「私達がこれから会う」
「そいつだ」
まさにというのだ。
「三人目だ」
「そうですね」
「ではそいつの屋敷にだ」
「これからですね」
「行く」
こう言うのだった。
「今からな」
「あの屋敷です」
譲二は前にある質素な造りだが壁に囲まれた広い屋敷を指差した、日本の平安期後期の建築様式だ。
「あちらにです」
「いるか」
「はい、外出の可能性もありますが」
「それはない」
英雄は相手の所在についても断言した。
「いなければ橋に龍なぞ仕込ませてはいない」
「いるかあえてですか」
「俺達を試したのだ」
陰陽術で龍を出してそれに襲わせたというのだ。
「そうした」
「そういうことですか」
「そうだ、それでだが」
「これからですね」
「屋敷の中に入ろう」
その平安調の屋敷を見て言う。
「今からな」
「わかりました、それでは」
譲二も頷いてそしてだった、正も含めて三人で屋敷の門を潜った。すると屋敷の中からだ。
今度は公暁の礼装に似た青い服と黒の烏帽子の童子が出て来た、童子は三人の前に出るとぺこりと一礼して言ってきた。
「はじめまして」
「こちらこそな」
英雄が童子に応えた、だがそれだけでなく。
童子の気を察してだ、そのうえで童子自身に言った。
「そしてだが」
「私がですね」
「普通の人間ではないな」
「おわかりですか」
「人間の気には独特の流れがある」
「私にはその流れがない」
「人間の気がな」
それがというのだ。
「先程の龍の気に似ている」
「ご名答です、実は私は」
「式神か」
「はい」
その通りだとだ、童子はにこりと笑って答えた。彼等は今は庭の中にいるが池や木々はあるが江戸期の庭ではなくやはり平安期の庭だ。全体的な造りがそうでそしてやはり質素である。
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