EX回:第8話(改2)<龍田さん舞う>
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れているのが分かる。つまり海上で艦娘たちは、まさに『踊って』いるわけだ。
お陰で今も体調が優れない美保の夕立の動きが鈍くても、それは戦闘に慄いて立ちすくんでいるように見える。押してくるブルネイと防戦一方の美保。敵地とはいえ、これは盛り上がるな。
その陰では相変わらず艦娘たちの会話が続いている。
『そろそろ、時間っぽい』
『ウフフ……いつでも良いわよ』
次の瞬間ブルネイの夕立は美保の龍田さんを見てニコリと微笑んで突っ込む。
『夕立、突撃するっぽい!』
『ふっ!』
龍田さん(美保)が翻りつつ突きを放つ。夕立は僅かに身体を捻り最小限の動きでかわしつつ、なおも懐深くに飛び込む。長い金髪が翻る。
その夕立の派手な浴衣と長髪のコントラストが南国の強い日差しに映える。まさに蝶の舞だ。
(うちの夕立もアノくらい凛々しくなれば良いなあ)
インカムを通して聞こえてくる息遣いから龍田さんが3/4拍子から、4/4、4/8……変拍子でリズムを取っているのが感じられた。まだまだ余裕だな。美保だけでなくブルネイの龍田さんや夕立も互いに美保の龍田さんに呼吸を合わせてくれている。その余裕はさすがだ。
しかし美保の龍田さんが、そんな高等な技能を持っていたのは意外だった。或いはブルネイの胸を借りて一緒に技量を上げているようにも見えた。いずれにせよ手に汗握る格闘となっていた。
龍田さんも伊達に経験を重ねている訳ではない。日向とは違うタイプの「武人」だ。だから飛行機にも酔わなかったのだろう。
(艦娘って本当に底知れないものがあるんだな)
しかし、この演習は貴重な経験になる。有り難い……私は胸のメモ帳をまさぐった。もし無事に日本に帰ることが出来たら彼女の鍛練も考えよう。
(そう言えば)
私は別の海上に目をやった。
「うちの日向は?」
水柱の向こうにブルネイの日向と向き合って……。
(あいつらナニやってるんだ?)
視線をずらすと、その近くに赤城さんペア。
(またあの二人まで何してる?)
海上では、まだブルネイVS美保の艦娘たちによる激しい一騎打ちが続く。水柱の合間から見える彼女たちの距離は半間もないだろう。そこから拳打を繰り出すには腰や身体を捩るように回転を使って速度と力を乗せていく必要がある。日頃の鍛錬無しに決して出来ない動きだ。
『ぐっ……!』
誰かの声が伝わる。
白熱する実況アナウンス。
<あぁっとぉ、夕立さんの拳が龍田さんの右脇腹を抉るっ、相手の龍田さんの表情が苦悶に歪むっ>
会場が盛り上がる。お客さんたちは総立ちで熱狂だ。格闘技の会場みたいだな。
だがインカムからの音声は違っていた。
『どう? この表情。痛そう?』
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