EX回:第8話(改2)<龍田さん舞う>
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
るのか。
他の艦娘たち……特にブルネイの彼女たちは、まだ本気ではないようだ。意図的に狙いを外しつつ『戦場』を演出していた。
普通に観覧席から見ている限り艦娘たちの間で、そんな会話が交わされているとは想像もつかない。彼女たちは砲撃と回避を繰り返しながら激しく動き回っている。砲声と砲火。そして水柱と、それだけでも見応えある。
美保の龍田さんが言う。
『私は絶好調だけど、同じ艦娘で戦っても披露するにはイマイチよね?』
するとブルネイの龍田さんは大きく頷いた。
『じゃあ……うちの夕立ちゃんとやる?』
彼女が長い武具を一回転させて海上で振り返ると、そこには美保と雰囲気の違う夕立が居た。
『強いけど大丈夫。寸止めも得意だから』
ブルネイの夕立は、お祭りモード満開で浴衣姿だった。それだけでも余裕……強さが滲み出ていた。紅い瞳の彼女は金髪をなびかせながら微笑んだ。
『夕立改2……お願いしますっぽい!』
私は冷や汗が出た。
「彼女……魚雷を素手で持っているぞ?」
「魚雷……顔」
寛代が呟く。
「なるほど魚雷なのにペイントしてあるな」
悪趣味というか。
だが美保の龍田さんも余裕だった。
『あらぁ? 浴衣姿も良いわねえ夕立ちゃん……じゃ私も、ちょっと踊ってみようかしら』
彼女は微笑むと弾幕を上手に避けるように優雅な舞いを踊り始めた。
『ウフフ、戦士の舞いよ』
それは気品すら感じさせる高貴なものだった。
もちろん観客にはポーズを決めながら激しく戦っているようにしか見えない。会場からは歓声と拍手が沸き起こる。
(役者だなあ)
私は感心した。
美保の夕立を除く2対1の軽巡と駆逐艦娘たちは互いに激しく戦っているような「舞い」を演じている。それは見事な『演武』だった。『型』の美しさと『優雅』さ。生半可な技量では出来ない。
ブルネイも美保も互いの艦娘たち(特に龍田さん)は普段から相当、鍛錬しているのだ。
私は興味深く観察していた。
(この時代には艦娘が素手で戦う白兵戦や接近戦を意識しているのか?)
……そんな印象を受けた。或いはブルネイ独特の方針かも知れないが。
普通に観客として見ても単なる演習よりは美しいフォームを見せる方が見栄えも良い。ショーとしても最高だ。
美保とブルネイの艦娘たちは空砲を順次、海や空へと発射していく。大きな水柱や弾幕が周囲に幾重にも張られる。その衝撃波で爆音が響き水柱が林立する。凄まじく派手だ。海から吹く風で硝煙と水しぶきの潮の香りが会場にも漂ってくる。盛り上がる観客。
漠然と見ていれば演習会場から聞こえるのは単なる砲弾の音だ。
しかし注意深く聞いていると拍子を取って一定のリズムに基づいて発射さ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ