翔希
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は決まっていた。何ならリズも分かっているだろう。
「やっぱり俺は……刀かな」
「……聞くまでもないわよね、あんたは。でもメインはカタナでいくとしても、他に何か手をだしてみてもいいんじゃないかしら?」
このクエストが始まる前にエギルの店に寄ってきたため、預けていた今までのアバターの装備など、再スタートのための最低限は戻ってきていたが、今の俺はもう日本刀《銀ノ月》を握れない。装備に必要な筋力値も足りなければ、複雑な整備に必要な鍛冶スキルも足りないため、まったく使えない状態だった。
「……考えとくよ」
それはリズにも分かっているのだろう故の申し出を、ありがたく受け取っておく。ソードスキルを使えないというバグからも解放されたために、先のアバターの時より選択肢が広がっていることを改めて自覚していると、隣から改心の叫びが聞こえてきた。
「っと……うん、いい感じ! ショウキは?」
「ちょっと待ってくれ」
何でもないような会話の終わりを告げるかのように、あちらが担当していた作業を終わらせたらしく、ツナギをまたもやはだけて腰の部分にまとめていた。同じ作業を同じように同条件でしているはずなのに、この違いは流石の経験の差といったところか。とはいえこちらも終わりそうなこともあって、特に慌てるようなこともなく作業を続行すると。
「……よし。こっちも終わった」
「なら合わせてみましょ!」
鍛冶スキルの幾分かの成長とともに、ようやく貰った端材を使った全ての作業が完了する。一つ一つは小さい物でしかないが、俺とリズが作った物がパズルのピースのように合わさっていき、新たな一つの物と生まれ変わっていく。最初からそれを目的にして作ってはいたが、こうも上手くいくと少しは面白い気分にもなっていく。
「……完成、ね」
「……ああ」
そうして出来上がったものは、新しいリズベット武具店の開店の第一歩となる、新生武具店の看板。端材をかき集めてパズルのように作っただけあって、少しでも雑に扱えば壊れてしまうほど拙いものだったが、それがむしろ新しい門出を意味していた。それに今の自分たちにこれ以上の看板を作製するスキルがないのも確かであり、満足いく出来映えだと自負している。
「うん、なかなかじゃないかしら!」
そんな二人の総力を結集して作った拙い看板であり、リズも色々な考えはあっただろうが、ひとまずは満足げにはにかんだ。そうして宣伝がてら看板を持ちながら転移門に向かっていくと、やはり《イグドラシル・シティ》のある場所へ向かっていく。以前までリズベット武具店があった一等地とは大違いの、雑多で人込みの多い商店街の一角――そこにある、小さな掘っ立て小屋だ。
「リズ、どうだ?」
「んー、もうちょっと右!」
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