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SAO−銀ノ月−
翔希
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あの目立つピンク色の髪を隠せるはずなのに。

「リズ……だよな?」

「他の誰に見えるってんのよ?」

 そうして目の前に立つ彼女は、間違いなくリズだったが、俺がよく知る『リズベット』ではなかった。確かにフードを被っていた時から声は違っていたが、それは《拡声魔法》を始めとするリズが取得している声に関する魔法かとばかり思っていたが、そんな様子はまるでなくて。

「あー、髪が見えちゃってたのね……」

「お前、まさか……」

 フード付きのコートを脱いであらわになった彼女のアバターは、やはりリズベットのものとは似ても似つかない。髪の色こそ同じピンク色で揃えていたが、無造作に跳ねる髪を煩わしそうに弄って、額に巻いたバンダナで無理やり肩まで届くセミロングのように纏めていた。コートの下も見慣れたエプロンドレスではなく、まさに作業着といったツナギだったが、暑いのか上半身はツナギをはだけさせていて、Tシャツと胸当てがさらけ出されている。そんな姿にリズが何をしたか察すると、リズは正解だとばかりに微笑んだ。

「そ。あたしも《SAO》のデータ消して、新しく始めちゃった!」

「なんで――」

「あら、それ以上なにか言うつもりなら、鏡を見ながら言ってね?」

「う」

 ……リズの行動を問いただそうとした瞬間、彼女のただ一言に言葉が詰まってしまう。リーベとの決着をつけるという下らないプライドのために、リズの反対を押し退けて勝手にデータを削除したのは、元はといえば俺であって。全くもって彼女に何かを言う権利など欠片もなく、二の句をつけずに黙ってしまう結果に終わった。

「あんたが勝手にどっか行っちゃうんならね。あたしも勝手に着いていくんだから!」

「いや……でもな?」

「それに、別に考えなしってわけじゃないのよ?」

 そんな俺の態度がたまらなく面白いとばかりに笑うリズだったが、こちらに指を突きつけながら真剣な態度を見せて。

「あんたがデータを消すことになったのは、あのリーベの嫌がらせでしょ? だからあたしも同じような状態になりつつ楽しんで、あんたの嫌がらせなんて無意味だった、って悔しがらせてやろうってね! ……それに」

「……それに?」

「ま、まあそれはともかく! そういうわけだから!」

 リーベを悔しがらせてやるために、という目的を語った後には、少しだけ恥ずかしそうな表情でそっぽを向いてしまい、リズがそれから何かを語ることはなく。とにかく二人ともデータの削除によってスキルも初期化されてしまえば、店を維持しておくなど不可能であり、惜しいが売りに出してしまうのは仕方のないことだろう。

「じゃあ、売れ残ってた武器とか素材はどうしたんだ?」

「無理を言ってエギルの店に置いてもらってるわよ
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