巻ノ百八 切支丹禁制その十一
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「やはりな」
「では、ですな」
「謀はいらぬ」
「天下が定まれば」
「そうなりますな」
「そうじゃ、若しあ奴が大人しくなれば」
天下が定まればというのだ。
「その時はな」
「何もしない」
「そのまま隠居してもらい」
「余生を過ごしてもらいますか」
「張子房の様であればよいが」
その漢の高祖の軍師であり謀も使ってきた、だが天下が統一されると仙人を目指して隠棲した。
「果たしてどうか」
「あのご気質ですと」
「どうにもですな」
「そうなるとは思えない」
「そうなのですな」
「うむ、そうじゃ」
そのことはというのだ。
「それが出来るとは思えんからな」
「やはりですな」
「その時はですか」
「そうするしかありませんか」
「そうじゃ、その時は覚悟しておこう」
秀忠も先の先を見ていた、そのうえで周りの者達にさらに言った。
「してわしの後じゃがな」
「はい、竹千代様ですな」
「やはりあの方ですな」
「あの方となりますな」
「そうじゃ、竹千代は長子であるしな」
秀忠と彼の正室であるお江の方との間に生まれただ、竹千代はその立場だからだというのである。
「だからな」
「それで、ですな」
「これより次の将軍として立派になって頂く為にですな」
「教えを施していく」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、そして立派な将軍になってもらう」
こう言うのだった。
「そして国松は奥がえらく可愛がっておるしわしも実の子じゃしな」
「元服されれば」
「その時は」
「駿河辺りで大名として治めてもらう」
そうしてもらうというのだ。
「是非な」
「ではその様に」
「ことを進めていきましょう」
江戸の幕臣達も秀忠の言葉に頷いた、彼等も天下のことを見定めていた。そのうえで政も進めていっていた。
巻ノ百八 完
2017・5・24
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