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真田十勇士
巻ノ百八 切支丹禁制その八

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「そうなるやも知れぬ」
「大久保殿は大御所様にとって」
「四天王の家と比べても遜色ないな」
「そこまでの家であり」
「親族でもある」
 徳川家、つまり松平家から見てもだ。
「そうした家だからのう」
「譜代中の譜代ですな」
「これまで何かと助けてもらった」
 家臣としてだ、そうしてもらっていたというのだ。
「だからな」
「何もないことがですな」
「一番よいが」
「しかしですか」
「上総介は謀が得手、しかしな」
「それでもですな」
「こうした時嘘は言わぬ」
 そうした者だというのだ。
「決してな」
「はい、あの方は」
「だからな」
「それで、ですな」
「わしもまさかとは思うが」
「調べられますか」
「その腹をくくった」
 そうだというのだ。
「あらゆる覚悟を決めてな、しかしな」
「それでもですか」
「彦左衛門達は一度改易してもな
「すぐにですな」
「用いたい、あの者はよき者じゃ」
 大久保のよさも見抜いているのだった、彼の本家には疑いの目を向ける様になっていてもだ。
「今時珍しい三河武士じゃ」
「三河武士ですか」
「三河武士も減ったわ」
 家康はこのことを残念にも思った。
「わしは長生きしておるが」
「それでもですな」
「四天王は皆世を去り」
「他の三河武士も」
「どんどん世を去っていっておる」
 それが今だとだ、家康は嘆きつつ話した、
「わしを置いてな」
「確かに。かつては松平家であり」
「三河にあった頃からの者達はな」
「ですな、少しずつ」
「いなくなっておる、人が死ぬのは必定」
 家康は瞑目する様にして服部に述べた。
「どの様な者でもな」
「必ず死ぬ」
「わしも然りじゃがな」
「ここにきてですな」
「昔からの三河武士はどんどん死んでな」
「残るは大久保殿とですな」
「少しじゃ、だから彦左衛門はじゃ」
 その彼はというのだ。
「何としてもな」
「死んで欲しくなく」
「まだな、そしてな」
「用いていかれたいですな」
「その通りじゃ、大久保家に何があっても」 
 それでもというのだ。
「やがては赦すし彦左衛門もな」
「例え改易になろうとも」
「その後で許してじゃ」
「用いられますな」
「そうしていく」
 こう服部に話した、このこともまた。
 そのうえで服部を動かす、幕府は多くの者が見えぬその中で動きがあった。だがそれでもだった。
 秀忠もだ、江戸でこんなことを言った。本多正信以外の幕臣達にだ。
「大久保家が切支丹と関りがあれば処罰するしかないが」
「それでもですな」
「本多家についてはですな」
「うむ、父親の方はよいが」
 本多正信はというのだ。
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