第5章:幽世と魔導師
第130話「説明、その一方で」
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「状況が状況なので、深く話す時間はない。よって、ある程度簡潔に話すが……まず、知ってもらう真実は、僕の妹、志導緋雪は吸血鬼だ」
その言葉の時点で、一気に騒めきが大きくなる。
そりゃそうだ。“吸血鬼”。それは人外の中でもポピュラーな存在。
緋雪がその存在だった時点で驚きだろう。
「嘘だと思うだろう。ありえないと思うだろう。……だけど、事実だ。正しくは、吸血鬼によく似た生物兵器……だがな」
「優輝君……」
“生物兵器”。その単語を言う時に若干拳に力が入る。
それに気が付いたのか、司が心配したようにこちらを見てくる。
……大丈夫。問題はない。
「生物兵器。……この単語の時点で皆は嫌な想像しかできないだろう。……ああ、その通りだ。僕だって思い出したくもない。……先に言っておくが、緋雪は元は人間だ。攫われ、人体実験をされた結果、こうなった」
前世の事は省く。今は伝える必要がないし、伝えるとさらに混乱する。
今話すのは緋雪の事。生物兵器と言う宿命を背負わされた事だ。
「生物兵器としての特徴を話しておこう。まず、身体能力は吸血鬼によく似たと言われるだけあって並外れている。腕力は大木を薙ぎ倒し、脚力は校舎を軽々飛び越えるだろう。……そして、吸血能力。これが吸血鬼に似ると言える所以だ」
そのまま特徴を話す。
常に血を必要とする事。
再生能力は高く、心臓と頭を潰さないと再生する事。
……そして、何よりも血を吸い続けると理性がなくなっていく事。逆に吸わなければ体が自壊して死に至る事。……それを皆に伝えた。
「緋雪は悲しんだし、嘆いた。どうしてこんな体になったのかと、どうして自分がこんな目に遭わなければならないんだと。……僕も同じだ。なんで緋雪が、妹があんな目に遭わなければならないと!何度も憤った!」
理性を失う事、血を吸わなければ自壊する事。
これを聞いて一部の人や教師陣はある程度察したらしい。
なんで緋雪が死んだのか。なぜ僕が殺したのか。
「……それでも、人間らしく生きた。体を作り変えられる前と同じように、笑って、遊んで、楽しんで……“普通”に生きようとした。僕も尽力したさ」
ああ。その後は容易に想像できるだろう。
……そんなの、“続く訳がない”と。
「でも、限界が来た」
実際、ムートの時も限界だった。
民からの恐怖は防ぎきれなかったし、シュネーの心は限界寸前だった。
「血を吸わずにいれば、自壊する。逆に吸えば、心まで“人間”ではなくなる。それに、人に迷惑を掛ける。……なら、どうするべきか?……その答えが、“死”だ」
「っ………」
何人もの人が息を呑んだ。
ああ、大部分が理解しただろう。理解してくれない
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