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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の2:小さく、一歩
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 躊躇いがちにしながら閉口するその者を庇うように、周囲の者等が同意の雰囲気を醸し出す。だがコーデリアにとってはそれは己に不満を催すだけの代物である。

「この中には、貴族階級の生まれでは無い者が居るのでしょう?その方々は己が生まれた階層の人々を、信用できないというのですか?」
「そ、そんな高度の政治性を伴う機関自体、一般の臣民を受け入れる余地が無いというのが正しいのです。まして、はっ、臣民にですと?彼らのような馬鹿をそんな機関に据えるというのは・・・・・・あっ」

 老人の一人が顔付きをはっとさせて王女を、そしてレイモンドへと目をやった。後者は無論の事、前者の視線といったら、口走った男を射殺さんばかりの強烈さであった。

「・・・・・・貴様、半年間、三割減給」
「・・・嗚呼・・・」

 執政長官の冷徹な判決に、男はやってしまったとばかりに顔を顰めて俯く。隣に座る男が励ますように小声で囁いた。静けさに満ちた一室にその声は良く通った。

「そういうのは私とて時折思うがな、口に出すものではないぞ」
「その通り。彼らを馬鹿にする事自体が為政者としてあるまじき行為です。彼らの知性を向上し得ないでいる自分達の無能さに対する批判となるのです。貴方には、その自覚が無いのですか?」
「・・・・・・失礼致しました」

 男が頭を下げた。王女はそれを一瞥すると、再び座上の老人達を見据え、強気な言動で言い放つ。

「自分達が治める人々なのですよ?貴方達を常日頃から、この白銀の都で見てきた人々です。毎日を都で過ごし、そして其処に生じる問題に正面からぶつかってきた人々なのです。寧ろ彼らは、貴方達より街の仔細の問題に詳しい」
「殿下、憲兵との諸問題は別です!これは政治の問題なのです!我等で解決できるものです!」
「では聞きますが、政を司る者なら誰であっても、この問題を解決出来るという確証があるのですか?冷静で公平な判断を下せると?私は知っていますよ、この中には憲兵の幾人から内密に、経済的な支援を受けている者が居るという事実を。誰がとは言及しませんが」
「くっ・・・」

 更なる反論を紡ごうとした男の手を、同僚が諌めるように引き止める。無謀な真似をするなと頸を振られ、男は不承不承といった顔付きで閉口して、王女を睨む。その視線に目もくれず、王女は更なる言葉を紡いだ。

「貴方達は自らが治める人々を今一度、信じるに値する者だと知るべきです。自らが治める都に居住する権利を与えた者達なのです。一度信じたからには、二度信じるのも容易い事でしょう?
 ・・・彼らは確かに、高度に知的というわけではありません。しかしその純朴さゆえに、日々の問題に対する理解や熱意は、人一倍のものがあるのです。もしかすると、私達が思う以上に」
「・・・しかし・・・」

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