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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の2:小さく、一歩
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があるというものだ。我等が優秀なる文官達に仕事を回せば、何とか出来るだろう?」
「お、御言葉だが、卿よ。我等実務の者達は現在手一杯の状況なのだ。秋の収穫やそれに伴う実際の税収の把握、商人らの活動の認可、他にもやる事が沢山ある。仮にそれが回ったとしても、優先順位を考えるならば、かなり下位の方にならざるを得ん」
「・・・そうなのか?財務官?」
「はっ、真、その通りで御座います。矢張り此処は騎士の方の手を借りていただく他にはーーー」
「おいおい、頼むぞ?秋には大規模な軍事演習が予定されておるのだ。今は訓練で文官並に忙しい。手が回る訳無いだろう?・・・ああ、黒衛騎士団についても同じだ。結成してから間もないあいつらに、そんな大事を任せる訳にはいかん。仮にクマミ殿が棟梁になっているとしてもだ」
「では、この議題は収穫と演習が終わったら再び論じるというのはーーー」
「それこそ論外だ、馬鹿者。これは現下の問題なのだぞ、後回しなどしてみろ。これを嫌って、王都から臣民が流出してしまう。今しか出来んのだ。・・・誰か意見は?」

 ブルーム卿を中心として議論が走ろうとしているが、彼に向かって発言する誰も彼もが下火のような控え目な態度を崩さない。或いは強気な言動のブルームを嫌っての事なのかもしれない。この議題に対して責任を被るような行動を慎んでいると見切ったブルーム卿は、一つ彼らを睨み据えると、そのままにレイモンドを見遣った。

「考えとしてはその案、確かに有りだ。いや、それが最善策なのかもしれん。臣民が求めるのは迅速な対応だからな。だが実行する段となっては、見て分かる通りだ」
「如何せん憲兵を監視するといっても、彼らの行動を全て監視するというのは我等役人には到底不可能な問題です。圧倒的に数が足りませんぞ」
「・・・この際質は考えないものとしよう。現状打破が一番の課題なのだから、今は我等が現下の問題に対応しているというアピールだけで済まそうぞ。・・・他に案は?」

 確定した流れに対する解答は、無言であった。周りの姿勢を窺うように視線を巡らす者、口を開こうとしてそれを閉じる者、最初から議論に参加しようとしない者。事態に痺れを切らして口を開こうとしたブルームを遮るように、黙したままの王女が口を開いた。

「役人ではなく、臣民に、機関の運営を任せるというのは、如何でしょうか?」
「!本気ですか、王女殿下?」

 円卓の老人らがさっと目を向けた。王女は凛然とした瞳のまま、無言でその衆目を一つ一つ見据えた。老人の一人がおずおずと言う。

「で、殿下。御言葉ですが第三者の機関、しかも監視という強力なの役割を担う機関の運営を民草に任せるというのはーーー」
「非常に危ない、と言いたいのですか?」
「あ、危ないという程ではないのですが、その・・・」


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