第四章、その2の2:小さく、一歩
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り得るでしょう、特に改革派にとっては。保守派は地に足を着けて活動する一方で、彼らは悪く言えば烏合の衆。民族に改革を齎すという大義名分だけが彼らの綱領なのです。それに王国が手を貸せば、質実共に、本物の大義となります」
「逆に保守派にも気をつけろよ?棟梁のニ=ベリは頭の切れる男だ。下手な行動を取るでないぞ」
エルフ内を二分する派閥の一派、その頭領であるニ=ベリ。賢人会の警備兵が出世を重ね、現在では自治領防衛隊の将軍となっている。警備兵に留まらぬ有能さと苛烈さを持ち合わせているのは確かであるようだ。
老獪なエルフと苛烈なエルフ。正に水と油の組み合わせであり、それに板挟みとなれば間違い無く苦労する事疑い無しである。しかし酔いが早くに回った慧卓にとっては大した問題とは思えなかった。
「なんだろう・・・いまいち、緊張感が湧かないっていうか・・・どうでもいいっていうか」
「おいおい頼むぞ、補佐役殿?貴殿が助けないで、誰がアリッサ殿を助けるのだ?」
「まぁそうなんですけど・・・なんか想像出来ないんですよね、北嶺っていうのが」
目をとろんとさせた彼から酒を離させて、ワーグナーは俯き加減となって慧卓を覗き込むように告げる。
「ならば分かりやすい事を言って、貴殿に北嶺への親近感を湧かせてやろう・・・エルフの美女は、本当に凄いぞ」
「・・・」
「特に巫女はな」
「巫女いるんですか!?!?」
「お、おう、いるとも?」
「いやいますから、疑問符浮かべないで下さい」
凄まじき勢いに圧されて俄かに引き気味となる二人を他所に、慧卓は己の中で好き勝手に夢想を繰り広げていた。
「やった・・・やった・・・!遂に俺の時代が来たっ・・・!」
「良かったな、北に親しみが出来て」
「巫女服をアリッサさんやキーラに着せてやるんだ・・・!」
「・・・ジョンソン、私も北にいーーー」
「行ったら殺しますよ?貴方の息子を」
「・・・どっちの意味で?」
ただにやりと笑うだけのジョンソンを見て乾いた息を零しつつ、ワーグナーは勇んでいる慧卓の肩をぽんぽんと軽く叩いた。
「まぁ兎に角だ、元気でやれよ、ケイタク君」
「了解でぇーす」
ほろ酔い加減の若き騎士を見てあからさまに嘆息を零すジョンソン。酒を注ぎ足したグラスを押し付けてにやにやと微笑むワーグナー。それに挟まれるように、慧卓は押し付けられたグラスを煽り、喉を焼くような葡萄酒を上機嫌で煽っていった。
その一連の会話に聞き耳を立てていた者が居た。口元の脂を拭い取りながら、パウリナは横に座る己の主人に問う。
「御主人・・・巫女って本当ですか?」
「ああ、本当に居るぞ。エルフが信奉する神々に祈りを捧げるのが巫女だ。神聖さと純朴さが求められるから、必然的に麗人や美少女が選出
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