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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の2:小さく、一歩
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ついと酒を飲んでしまう。知らぬ間に残り僅かとなった所でワーグナーに返した。グラスに継ぎ足してぐいっと煽って息を漏らすと、ワーグナーは言う。

「今日逢ったのも何かの縁だ、私から助言をしてやろう・・・・・・うーん・・・」
「どうしました?」
「・・・いや、してやる心算が何を言ったら良いのか分からなくなって来た。すまん、ジョンソン、こっちに来て先に言ってくれ」

 篝火の近くで肉を頬張っていた財政官のジョンソンが歩み寄ってきて、呆れ口調でワーグナーに話す。

「全く、あれほど酒を飲みすぎると頭が回らなくなると言っているのに、この人は・・・。では私が先に言いますから、それまで考えていて下さいね」
「おお、期待しているぞぉ」

 軽々しく言われて内心むっときながらも、ジョンソンはそれを気に留めぬように虚空を睨んだ。そして常の冷静な顔つきをして慧卓に向き直る。

「ケイタク殿。これから何が起きようとも、それは貴方が原因となるものではありません。元々其処に積み重なった幾つもの原因が、偶然貴方が訪れた時に、結果に繋がるだけの事です。ですから貴方が出来る事は唯一つ、その事態から貴方に連れ添う仲間を守る事、それだけですよ」
「・・・は、はぁ。なんか預言者みたいな言い振りですね」
「北嶺に関わる情報を収集していれば、大体これくらいの予想はつきますよ。・・・あの民族、近い内に内輪揉めの勢いを一気に増すでしょう。仮に内乱を起こすまで事態が悪化するとなれば、帝国の介入を受ける危険がある」
「うむ、そうだな。事態は其処まで切迫しておる。特に改革派の頸が変わった辺りから、きな臭くなってきおった」
「・・・それが賢人、イル=フードですね?」
「知っておった・・・いや、知って当然か、ケイタク殿」
「はい。ミラー様もその方の過激さを危惧しておりましたので」

 エルフ賢人会の長にして改革派棟梁の老人、それがイル=フード。彼の事を話す際にミラーは、常以上に警戒の色を強くしていたのが印象的であった。ブルーム卿から要注意人物として警戒するように言われたのだろうか。だとすると、非常に厄介な人物である。

「・・・イル=フードは、以前は自治領内でエルフの独立を訴えてきた人物だ。そして年月と共に言葉を苛烈とさせて、信者を増やし、今では一派の棟梁だ。中々の役者であるのは間違いない」
「・・・ですけど、ワーグナーさん。賢人と呼ばれる人間によって率いられた組織は、昔以上に暴力的な色を強めています。賢人が徒に乱を招いてもいいんでしょうか?」
「歴史上、寧ろその手の者こそが、過激さを内包するものだ。自らを慕う臣下の者達を救うため、そして己の知識の有用性を確かめるため、あくまで手段の一つとして開戦を選択する。理に適っておるよ」
「・・・この度の調停団の派遣は好機と成
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