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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の2:小さく、一歩
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象徴する健康で張りのある肌。痩せ過ぎず、太り過ぎない程度の身体つきであり、飢えを知らぬ生活のお陰か当然の事ながら豊胸でもあった。そして恐ろしきはそれがまだ七部咲き程度の大きさであろうという事。成長が完全に止まるまで胸は大きくなり、それに伴い艶やかな色も肌に乗せていくだろう。将来有望の肉体であり、それに言い寄られる慧卓とて内心悪い気はしてないだろうと考えると、胸に針が刺さったような痛みが走った。。

「ふぅ・・・やっと一息つけますね」
「・・・流石、貴族の令嬢」
「え?」
「ふふふ。お胸、大きいですね」
「う、うん・・・まぁね」
「・・・ちっ、どいつもこいつも発育が・・・ちょっと触らせろ」
「えっ?あ、やぁっ・・・もぉ、駄目ですよぉ」

 片手で胸の頂を隠しつつ、右手を無遠慮に伸ばしてキーラの胸を揉んでいく。戸惑いながらも笑んで、キーラはそれに抵抗するようにアリッサの腕を抑えようとしていく。
 階下から響くかしがましさに、馬車の天上部分に布で固定されていた慧卓は、力無く息を零した。

「・・・・・・触りたいよー」

 かんかん照りの太陽を遮るのはチュニックと、顔に被さった濡れ雑巾と水滴だけである。どうしてこうなったかを遡るのは容易く、口に出すのも億劫である。女心怖いという感想のみが、要らぬ所で要らぬ事を口走る自身に反省の意を促していた。暑さとかしがましさに耐えつつ、慧卓は死人のような唸り声を漏らした。





 じりじりと蒸せる夜に、篝火が火花を弾けさせる音が響いている。拍手のように響くそれによって、一頭の鹿が棒に括られて炙られていた。毛皮は削がれ、肉は空腹を誘う良き臭いをかぐわせている。一時の疲れを忘れて、皆が皆、思い思いに炙り肉を啄ばんでは腹の虫をなだめていた。

「いやぁ、まさかこんな所でお会いするとは予想もしていなかった!また会えて嬉しいぞ、ケイタク殿!」
「ははっ、俺も同じです、ワーグナー様。どうして此処に?」
「うむ。趣味で狩猟をしていててな、ジョンソンも連れて来ておる。いい場所だぞ、此処は」

 馬車の近くに転がっている丸太に腰掛けるのは慧卓、そして年季の入った毛皮の服を羽織った、『ロプスマ』の造営官であるワーグナーであった。慧卓等が行進している最中に偶然にも邂逅して、一夜を共に過ごす事と相成った訳である。彼曰く、この地域は野生の鹿や羊が棲息しているため狩猟に打って付けらしい。そうであるからこその、慧卓の晩餐の豪華さである。
 指についた肉の脂を舐め取って篝火を囲う人々の騒がしさに目を遣りつつ、ワーグナーは話し掛けてきた。

「流石の早さだよ、ケイタク殿」
「?」
「私と出遭ってからたかが一月とそこいらだというのに、もう騎士となっておるとはな・・・。私はもっと遅かったぞ」
「そう
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