暁 〜小説投稿サイト〜
魔王卑弥呼
遭遇
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ッシノッシ」と近づいて来る。
 美樹は気絶しそうになりながらも後ずさる。
「ひっひひ」
 大男の大きな手が美樹の顔全体を鷲づかみにする。
 美樹は意識を失った。

「人間界にちょっかい出したらだめだろ?」
 大男の後ろにいつの間にか大男よりも大きな素っ裸の大女が立っていた。
 髪はショートカット、目はパッチリと丸い、鼻は高い方ではなく上を向いている、丸い鼻の穴が正面からもハッキリと見える。
 頬の上が盛り上がっていて唇は上下ともに厚い。

 体の大きさを除けば織田美樹と瓜二つであった。
「ひっひひ」
 大男がゆっくりと振り向く。
「ガスーン」
 大女のパンチが大男の大きな口を殴る、その握り拳は大男の口に入る。

 大男が手をそのままかじる、サメのような牙だ。
「ああっ」
 大女は苦しそうに呻く、しかし空いている手で大男の首を絞める。

 大男が手を?み切るか大女が首を折るかの勝負だ。
「ボッキィッ」
 大男の首が不自然に曲がる、首が折れたのだ、しかしかじるのをやめない。

「うっく」
 大女は苦しそうだ、しかし首から手を離し大きく後ろへ振りかぶる、そして空手チョップのように水平に大男の首めがけて叩きつける。

「スポン」
 大男の首が千切れた、しかしそれでも大男の口はかじるのをやめない。
 今度は大男の頭を握りつぶす。

「バキボキ」
 大男の頭が砕け散る、中から少ない脳髄が飛び出て大女の顔に当たる、しかしそれでもその口はかじるのをやめない。
「しつこいんだよ」

 今度は大男の顎を握りつぶす。
「ゴキッ」
 ようやく口から手が解放された。
 しかし首を失った大男の体はまだ生きていた、美樹の顔全体を鷲づかみにしたままだ。

「バキバキ」
 音がして美樹の顔が潰れていく、目が飛び出る。
「ボキバキボキ」
 頭ごと顔が潰された。

 大女が大きく口を開ける。
「うぉぉぉーん」
 大女が叫ぶ、いや、音がしない、いや、する。
「メキメキメキ」

 大男の体全体が小刻みに震える、そしてガラスのように砕け散った。
「人魔クチダケ、お前の執念を見た」
「ズボッ、ズボッ」
 雪の足音を立てながら美樹の死体に近づいて行く。
「可哀想な子、助けてあげるわ」
 そう言って魔王卑弥呼ひみこは美樹の死体を食べ尽くした。

「うーん」
 目が覚めるとそこは土木の現場だった。
「えっ?……私……」
(確か穴に落ちた……いえ、引きずり込まれたはず……)
 しかしそこから先の記憶がない。

「あっ、監督!大丈夫ですか?」
 現場監督が気絶をしている、遠くで救急車とパトカーのサイレンの音がしていた。
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